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6月30日昼 東京タンバリン「鉄の纏足」

私の中ではかなりの激戦を勝ち抜いての選択でした。そのくらい気になっていた劇団。

駅前劇場の使い方にまず驚き。真ん中に舞台を置いて奥と手前両面からの観劇はここでは初めてでした。やるな。でもそのせいで空調がうまく行かなくなったようで、基本的に客席はむんむん、ごく一部だけクーラー効き過ぎで寒かったみたい。

当日パンフレットを読んで、高井浩子さんのコメントにものすごく共感。私も日常のごく些細なことに腹立ててるから。自由席の芝居観に行って、早く行ってど真ん中の席座ったのに開演直前に詰めさせられた、とか、飲み屋の店員の気が利かないとか、エスカレーターを急いで上ってるのに、前の人が立ち止まった、とか。常に心の中で悪態ついたり舌打ちしたり。それがいつ表面化するか。攻撃すれば自分は加害者、それに仕返しされれば被害者に。

そんなことをつらつら考えているうちに開演。舞台はビデオ屋と図書館。どちらもものを貸しだす場所と言う点は共通してますが、この舞台でのそこの人間模様には大きな違いがありました。ビデオ屋に新しくバイトに入った31歳男子。彼女のバイト先だったから。就職先が決まるまでのつなぎ。ここには大学生や社長の息子、音大卒のピアニスト志望者など他のバイト仲間や若い店長がいて、好意や嫉妬などの熱い人間関係が広がっています。

一方の図書館はちょっと変わった感じ。借りたい本を受付に持っていくと図書館員が読み、その記憶がメディアに写されて貸し出されるという仕組み。ちょっとややこしいな。なので図書館員はひたすら静かに本を読み続けます。他人に干渉せず、干渉されず。名前で呼び合うことからさえ解放され、番号のみが介在する間柄なわけです。

ビデオ屋の店員と図書館員の名前はリンクしているがそれぞれ違う役者さんが演じています。そこがまた複雑なんだけど。両極端の世界のつなぎには主役の男子の得意なバスケットボールのパスシーンが使われ、コミュニケーションにおけるキャッチボールを象徴しているようにも、とれます。

ビデオ屋のバイト君は店長や先輩バイトのねたみ、恋人とピアニストの卵との諍い、バイト仲間の友達へのセクハラ疑い、先輩バイトたち同志の同性愛、客とのトラブル、父親からの圧力などでイライラを募らせ、最後にはある事件を起こしてしまいます。さらに最後の最後にはかばってくれていた彼女への裏切りをしてしまい、彼女からも見捨てられ。

重たくどろどろした感情を抱えての結末。なのになんとなくじとっとしてないすっきりした終わりっぷりはなんでなんだろう。事件を起こした側の気持ちも起こされた側の気持ちも、周りで見てた人の気持ちも、どれも自分の中にあるものだからだったのかな。

じわじわとながら、噛みしめたお芝居でした。つい脚本買っちゃった。繰り返し味わいたいと思います。

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