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8月5日夜 鹿殺しオルタナティブズVol.2「魔人現る」

前々から鹿殺しは名前が気になっていたんですが、前回の「僕を愛ちて」が初めて。そこでの役者さんたちの体のキレというのか、動きの美しさに目を奪われたんですよね。路上ライブも気になってますが、ちゃんとチェックしてないのでいまだに行けずにいます。気になるなあ。

今回はアゴラ劇場で。なんかちょっと毛色の違う感じ。しかもアゴラ劇場で指定席って初めて。なかなかいい番号な感じだけどどうなんだろうって。

行ってみたらぎゅうづめの指定席。背もたれ無しであそこまで足を縮めないと座れない席ってちょっとひどい。見れば後ろの椅子席もほとんど足のスペースなし。人気の劇団だから人を入れたいのはわかるけどちょっときつすぎだなあ。しかも最前列のはじっこなんて壁と舞台上のスピーカーでかなり見えなさそう。。。自分だったらいらいらしまくりだな、あれは。

舞台はつり革のようなリングをつけた鎖が舞台の奥行きの真ん中ぐらいに一列に並んだだけのシンプルなもの。それが上下する様子はなかなか美しくて、センスいい。

お話は都市伝説にまつわるもの。会社の同僚の二人が終電に乗って帰る途中、話題に上ったのが黒い服の女伝説。この路線の終電で黒い女を見かけたら、その女と死ぬまで遊び続けなければならない、という。そこで女は黒い女を見てしまい、その直後にかつて憧れたロックバンドのボーカルに出会って…。

停まる駅が黒い女によって操られ、乗客3人はそれぞれの過去を覗き込むことにことになります。浮かび上がって来るのは「ウエノヒロシ」という男。この男と黒い女とが巡り合ったら…。

山本聡司さん演じるウエノがすごい。3人の思い出の中のウエノは全くの別人。が、どの人の中でも強い感情を呼び起こさせるインパクトをもって存在している。愛から転じてしまった呪いとも怨念ともつかない負の感情を抱いて、思い出の中のウエノヒロシは現れます。左手の爛れたその姿はひどくグロテスクで、視覚的にも恐ろしい。

黒い女を演じる高山奈央子さんも恐怖をそそります。しゃべり方、仕草一つがまさに伝説。

過去や現在、個々の記憶に話は飛ぶので、ついていくのにエネルギーは要りますが、それも含めてやはり鹿殺しはいい。勢いのあるものを受けとめるには、こちらもパワーをっていうのはなかなか気持ちいい。アフタートークに役者さんが全員で出てきたのもうれしかったです。山本さんの左手が公演期間中ずっとあのままだと聞いてびっくり。役者根性だなあ。

でも観劇環境や観客に対する配慮的にはまだまだ。次は大きな劇場なのでそういう問題は解消されるんでしょうが、小劇場でのサービスも忘れないでほしい。

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