10月30日夜 庭劇団ペニノ「野鴨」
こんなにしんどいのにこんなに充実感。やっぱりお芝居っていいなあと思える時間。
庭劇団ペニノのタニノクロウさんが初めて外で取り組んだこの作品。例によって私は知識不足なんでイプセンの原作は知りません。元は4時間くらいかかる大作なようですが、だいぶ短くはなってます。それでも2時間半を越えて紡がれる深く苦しいお話。
人生順風満帆な裕福な男ヴェルレと、貧しく暮らしやや痴呆になりかけている男エクダルがいる。二人は昔親友だったがある事件でヴェルレが無罪、エクダルが罪を押し付けられ有罪となったため人間関係は崩壊した。無罪になったヴェルレは罪を押し付けたエクダルを金銭的には支え続けていたが…。かつては交流のあった互いの息子が17年ぶりに再会するところから物語は始まる。金持ちの息子グレーゲルスは人生の理想というものを強く描いており、自分にはないそれを他者に押し付け求める。その相手となったのが貧しい男の息子ヤルマール。金持ちの家のお手伝いだった女ギーナを妻に娶り、かわいい娘ヘドヴィックに恵まれ写真屋として慎しく暮らしていたそのヤルマール。しかしグレーゲルスが関わってきたことにより、自分の暮らしが全てヴェルレに支えられてたと気づかされ、さらに妻の過去、娘の出自に至るまで隠されていた真実を知る屈辱を味わう。その屈辱、精神的苦痛を背負ったヤルマールが真の幸せをつかもうと立ち上がる様を見たいがために、グレーゲルスは真実を知らせたのだった。苦悩するヤルマール、そして彼に理想の男像を求めるグレーゲルス。家族を愛せなくなったヤルマールに対し、娘ヘドヴィックは深く傷つき、そして…。
グレーゲルス役に保村大和さん、ヤルマール役に手塚とおるさん。お二人の自らを貫き真剣に生き悩む演技がすばらしい。そして多くは語らないが何かを抱えた金持ちヴェルレ役の津嘉山正種さん、その付き人のマメ山田さんが最初と最後に深みを。前半、みな怪しく妖しく、どこか裏のある含みのあるような雰囲気にどきどきし、何か起こりそうな気配にざわざわと背筋をまさぐられ。後半、次々に明かされる事実におののく。悪い企みをもっていそうに見えたのは、実は真剣に生き、純粋に求めるものを追っていたに過ぎなかった。この重さがしんどさでもあり、二時間半を長く感じさせないパワーでもあるんでしょうね。
とにかく舞台装置はすごいです。圧巻。本物の森にいるようなセット、空気までリアル。山まで切りに行ったとのことで。自然の爽やかさとおどろおどろしさ、恐さが感じられます。葉のさざめきまでもがお話を作ってました。この舞台を感じるだけでも足を運ぶ価値あり。っていうか五感をフル活用するお芝居ならではの醍醐味。
五感と言えば転換の時の生演奏がすっごく素敵。他に余計な音がないから、印象的に感じました。
まだこなれてなさそうな部分も感じられたので、後半どんどん味わい深くなりそう。特に石田えりさんのギーナとか。うーん、もう一回行くか迷うなあ。。。あとからブログでプログラムのことを知りました。観る前に欲しかったな。取り寄せようかな。
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