12月12日昼夜 アロッタファジャイナ番外公演「クリスマス、愛の演劇祭」
番外公演の企画第二段。普段は俳優の劇団員が作・演出をてがけた小品を並べてたっぷりみせてくれます。10月にあった双数姉妹トライアルや15minutes madeなど、試食的なアラカルトって楽しくて好き。
藤澤組。性同一性障害で心は男なのに体は女のサダ。両親ともめて家出して自活を試みるが、その障害とは別の次元で自分の社会適合能力がないことを思い知る。しかしある日バイト先で知り合った男とお笑いコンビを組むことになって…。サダ役の大石綾子さんがなんともかわいい。悩む姿が滑稽で。空風ビュービューのからみ方が「木更津キャッツアイ」での氣志團ちっくで楽しい。少し乱暴な飛ばし方はしているけど、それがいい勢いに感じられました。お気楽に笑いながらも性の話や親子、自立についてなど切なくなるようなエピソードが散りばめられていて、結構好み。
野木組。おもちゃ工房を営む夫婦の家。女の子のおもちゃが2体あるのだがその人形を溺愛する夫婦には秘密があり、取材と称してその秘密を暴こうとしる男が近寄ってきて。人形になりきっている姉妹には過去の悲しい記憶が…。ミステリー要素のあるファンタジー。結局夫婦と人形達の関係や男が執拗に人形を手に入れようとする意味が、私には理解しづらかった。けど人形の可愛らしさにはきゅんとしちゃった。人形に徹した時の輝きのない目としゃべりはじめた時の生き生きした姿が対照的で。青い雪をイメージした照明も寂しさが染みてきます。
新津組。昭和40年代の埼玉の小さな町で。星一徹のような父と従順な母と暮らすかわいく優しい少女。近所にはちょっと変わった宇宙系の少年やギターを爪弾く高校生がいて。。。たった3人の俳優がめまぐるしく役を変えながらテンポよく展開。コント風であるけどかなり緻密に丁寧に作ってある印象を受けます。キャラの一つ一つもとってもおもしろい。あのオバちゃんキャラはインパクト大で忘れられません。
松枝組。ある画家とその妻。画家の下に修行に来ていた画家の卵の青年は許婚がいるにもかかわらず師匠の妻を愛してしまう。妻にはある過去があり、夫に見出されて今がある。夫がいなければ生きられないと言いながら、青年と淫らな行為をして。ある日現場に鉢合わせしてしまい、妻を責め嬲る画家を青年は殴りつけ。。。画家は障害を負うが妻は慈愛のこもった眼差しで見つめ続ける。まるですべて計算の上だったかのように…。なんて官能的で耽美。観ているこっちがメロメロで溶けてしまいそう。谷崎潤一郎の世界のよう。妻の鎖雪の、天使でありながら魔性の女という役柄は、男女で目線の違いはあろうけど誰にとっても永遠の憧れ。安川結花さんがピュアな色気を出してほんとに素敵。純白の衣裳に裸足というのが象徴的で。たっぷりの長編をみせていただいたような余韻に酔いました。
姉組。締め切り前に逃亡した作家を追って、はるかリスボンにまで赴く編集者の話。ダンス中心ということでしたが、うーん、どうなのかな。ダンスをするならもっと楽しそうにいかにもダンスしたくてたまらない感がほしい。苦手だけどやるならチャレンジするかというように、自信なさそうに隣を見ながら踊っているのはこっちも心配だしなんか気持ちよくないんです。そういう演出なら仕方ないけど。もったいないです。
弟組。当日パンフの言葉がすごくいい。役者の演技そのものではなく、物語に涙する観客に絶望したっていうくだり。何気なく泣いてる自分の涙は何に対してなのか、考えちゃいます。そして、そんなことを書いちゃう作者がどんな芝居を見せてくれるのか。題名どおりのないようで、言葉なしでも伝わるものを感じました。共通の言語を持たないっていうのを外国人労働者に設定してるふうなのはちょっとどうかなと思いましたけど。むしろ日本人だから伝わる身体表現とか表情とかにこだわるのかと思ったので。細かいことはわからなくても、ジェスチャーや目線で感じられる部分は大きく、実験ながらおもしろく観られました。やっぱりギャラリーと言う空間の持つ力も大きくて。
本当に座っているだけで目の前で次々にいろいろな作品が並べられて、あっという間の6時間でした。1作品45分と言うのはちょうどいいのかも。入れ替えはかなり大雑把に感じましたけど。1公演分のチケットでしばらく座っていてもバレなそうな感じ(笑)。ずっと見続ける人と一回で出て行く人、次から入る人の整理は難しいですね。途中から入る人は早く来ても入れないし、席もだいぶ埋まっちゃってたりするし。
あと作品の並べ順とかも。何か考えがあったりするのかな。この日はわりとバランスよくてよかったけど、毎日違うからにはなにかあるんでしょうね。総括の座談会かがあったらおもしろそうだな。
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