5月12日夜 風琴工房「hg」
チラシにも当日パンフにも丁寧に説明がありますが、水俣病をめぐる、当時の企業内部の話と、現在の施設を訪れた劇作家の話の2部構成。
前半、水俣病の原因究明に関与する人たちの会議。家族が水俣病になっている被害者や地元採用の社員は参加が許されないトップシークレット会談。やがて罪をかぶることになる工場長の篠塚祥司さん、栗原茂さん、浅倉洋介さん演じる技術研究員たち、佐藤誓さん、金替康博さん演じる医師たち。私、こういう男たちの逡巡、精神的なぶつかり合い、みたいなシーンがずいぶん好きみたい。かなりじーんときました。真剣に生きてる姿勢。立場に思いが負けざるを得ない苦悩。
後半は胎児性水俣病などの心身障害者施設に、これを芝居にしようと劇作家が見学に来ている、というメタ的な設定。いい人ばかりが出てくる、めでたしめでたしな予定調和、といったちょっと優等生的なくさみは感じるけど、伝えたいところまできっちりつながるうねりが力強い。
すばらしいドキュメンタリーはいくらでもある、っていう施設職員の台詞は、まさに観客側からの思いの代弁でもありました。こういう作りで演劇にする意義。作家の伝えたいことをこんな風に組み込み、こういう形で納得させるっていうのもアリ、と思わせる説得力が。
やっぱり達者な俳優さんが演じるっていうのは強いな。会社の役員だけでなく、水俣病患者役、単なる真似でなくデフォルメするでなく忠実に演じきる技量って。戯曲がどんなによくても、演出が長けてても、それに応えられる俳優の存在がなくちゃ。まぁどれが欠けても傑作にはならないんだけど。この間のデスロックにしても、この風琴工房にしても、方向性はまったく違うけど、役者のモンスター的な力に圧倒された部分も大きいと思いました。
劇場でない空間で、できれば地元で、鑑賞できたらまたおもしろいだろうな。
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