11月25日夜 MU「死んだ赤鬼/戦争に行って来た(反転)」
両A面と称しての短篇2本。にしてもすごい役者さんばかり集めたなぁ。「戦争に行ってきた」は前回観たのでどの役をどの俳優さんが?って想像しても楽しめる。
「戦争に行ってきた(反転)」お得意の男女入れ替えでの再演。戦地で人質にされた反戦団体メンバー達が、あるバンドに反戦歌作りを依頼する。出来上がった曲は全く意に沿わないもので、顔を合わせて条件のすり合わせをすることになったのだが。
役柄のイメージってやっぱり俳優さんによってかなり左右されるんだなと実感。男女を入れ替えたことで、おそらく描きたい世界も変わったんだと思います。女性が戦場に行ったこと、男性がちゃらちゃらしたバンドをやってること、もしかしたら初演の方がすんなり受け入れやすい形だったのかもしれませんが、私はそこは気にならずむしろおもしろかったです。設定がリアルかどうかの見極めの前に私には初演との比較目線が強くなっちゃったから。それも踏まえて、前回は中川智明さんが演じた五味役を足利彩さんが演じると、っていうのがすごくおもしろかった。胡散臭くて真意のつかみにくい気持ち悪い感じだったのが、反戦とグロ写真撮影の矛盾にちゃんと向き合って揺れ、もう一つの世界に気付いて恐れる感覚がリアルに思えました。
足利さんの目線、目付き一つ一つがすごく雄弁で、まつげの伏せ具合さえ何かを感じる、気がする。近いからごまかしの効かないところで、ぐさりとやられた感じ。
バンド側の男子二人の、人を人とも思わない世間をナメ切った態度も、マッチョじゃない男子だからのなよっと感がよかったです。永山智啓さんと川本喬介さんのほのぼの感。ガールズバンドでは若さ特有の全知全能感がぎすぎすしてたけど、男子だと生意気な口たたいても僕達暴力なら逃げますから、的なこずるい雰囲気がいい味。
反転、おもしろいな。
「死んだ赤鬼」付き合ってた女に浮気されフラれた警官。弱さを逃げ道にされて腹を立て、つい浮気相手を殺してしまう。罪を認めようとするのに、罪をかぶってくれようとする男が現れたり、もみ消そうとする人が出てきたり。
弱さを口実に要領よく生き抜けようとする人々と、弱さを認めたがらないまま姑息な方法で切り抜けようとする人々。殺人など設定は突飛でも結構生々しくてエグい問題を突き付けられたような気分。どちらになりたいか、どちらが得か、無意識に計算しちゃってる、なんてちょっと怖い。
実験作と作者本人が宣う今作。結構わくわくできたな、私は。夢と現つを曖昧に、この世界や殺したことさえ空想じゃないかと感じちゃうようなふんわり浮いた感覚でした。
血みどろゾンビを見たとは思えない、ファンタジックな後味。
やっぱりMUは短篇がいい。ラインを追わずに空気を味わうのが好きだな。
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