toi「四色の色鉛筆があれば」 2009/1/28 14:00
トラムの2つめ、平日2日間3ステージのみという観客泣かせの公演。期待たっぷりで。
濃い4本立て。
一つめ、「あゆみ」前回公演と同タイトルだけど人数を3人に絞っての改編。あゆみちゃんと幼なじみのみきちゃんの人生の歩み。演出は前回同様、会話をしながら右から左へ、左から右へとひたすら歩く。
幼い頃のちょっとした思い出、移り変わっていく風景が見える。じんわりほろ苦く感じるような懐かしさが優しくっていい。
まぁ前回公演あっての、って面もあるけど。
二つめ、「ハイパーリンくん」大人数でガヤっと出てきて、ストーリーはない。宇宙についての一考察、とでも言う感じ。
理科と数学と歴史の授業みたいな。虹の成り立ち、円周率、万有引力の発見、などなど質問、会話しながら、時にラップのリズムに乗せて軽快に。よくわからないけど楽しくなってくる。
10のN乗の距離を説明しながらの後半は、だんだんと舞台が客席まで拡散していく。包み込まれるようで心地よい。照明も落ちた中、四方から響く俳優の声に耳を澄ませながら目を閉じていると、ゆったりと世界が変わっていくよう。私は今、宇宙の中、この輪の中、作品自体の中。涙が出てくるくらいの幸せなトリップ感。
三つめ、「反復かつ連続」内山ちひろさんの一人芝居。てっきり場つなぎくらいの軽いものかと思いきや。。。いやいや、すばらしい。
ある家庭のある朝の風景。目覚まし時計で始まるいつもの朝。寝起きの悪い娘がぐずりながら朝の支度をし、学校に行くまでのシーンを淡々と描写します。
終わったと思ったらまた目覚ましのシーン。さっきの娘の声だけ流れ、そこで今度はお姉ちゃんが演じられる。あ、そうか、そういう会話だったのね、と楽しんでると、また一巡し、次。子供は実は四人姉妹、そして母、最後に祖母…。
この何度も反復されるシーンがなんともいとおしい。なにげない、この家族の中では何度も繰り返された朝なんだろう。だけど決して今も繰り返されてるわけじゃなさそうな、ノスタルジー。誰の記憶の中にも断片がきっとある。
私の弱点が母娘モノっていうせいもあるけど、気付いたら涙がつーっと流れてました。手が届かなくなっちゃった幸せな時間。でもその時間を経てきたことだけでも幸せ。
こういう形の一人芝居、おもしろいな。ズームイン朝のテーマの一人セッションだなんて。
四つめ、「純粋記憶再生装置」今はもう別れてしまった男女の記憶。そんな出来事ほんとにあったかどうかすら、今となっては思い出せないけど、幸せだった頃の思い出の再生。
男女二人ずつだったから二人一役かと思ったら、性別関係なく四人で二役。身体の役と台詞の役はバラバラで、ある二人がだらりといちゃついていると、その台詞は外側の二人が発していたり。身体は男性として振る舞いながら台詞は女性役だったり。不思議なちぐはぐ。
口パクにはちょっと違和感もあったけど、おもしろい。言葉を発する人、感情を持つ身体、そのずれがどこからどう生じているのか、きょろきょろしながら探す。誰がどうだとしても、幸せなころの記憶だから皆幸せそうなのがうれしくなる。
ただ、4人だけにしては舞台が広く感じてしまいました。雪の場面にはあれくらい広いほうがよかったかもしれないけど、奥と手前に分かれてしまうときょろきょろしにくい。
うん、でもどの切り口にしてもおもしろい。これをおもしろいとしか言えないのがもどかしいんだけど。意外性たっぷりの演出が、言葉や身体でちゃんと裏づけされているから、安心してどっぷり感情を解き放てるのが幸せ気分につながってると思う。うん、観て幸せになれる作品はいい。
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