ポツドール「愛の渦」 2009/3/11 19:30
私、昨年の「顔よ」を観なかったから、どれだけ久しぶりなんだろう、ポツドール。岸田戯曲賞作品の再演。
乱交サークルにて。セックスがしたくてしたくてたまらない男女が集まり、夜な夜な行為を繰り返す。今夜集まったのは男女4人ずつ。女は女子大生、保母さん、派遣OL、常連さん。男は フリーター、サラリーマン、ニート、童貞くん。後から参加したカップル。出会ってから解散まで。
気まずい空気から打ち解けて盛り上がり、ささいなことで揉めるけどやっぱり楽しかったね、みたいな、とってもささいな積み重ねで生まれる流れがさすがでした。イライラするほどの微妙なやりとりから、懸命に周りとの距離を計る。そして距離をつめる努力ではなく、距離は保ったまま間にあった障害物をどけるようなコミュニケーション。うまいなぁ。
セックスっていう最大の親密さに向かうことが目的なのにそれ以外の部分で近寄ってはいけない、しかもそれが1対1ではなく集団、という設定がものすごく生きてくるコミュニケーションなんですよね。すべて計算の上で完成された形。
それだからか、脚本を文字で読みたいっていう欲求にかられました。自分のペースで読んでみたらどうなんだろうっていう興味から。この俳優、この演出、この間、このタイミングでこんな感覚を味わうこの作品、すべて自分の流れで読んでみたらどう感じるのかなって、あんまりいつもは思うことのない形で興味を持ちました。
っていうのも、なんかうますぎて優等生的な感じばっかり受けてしまったから。現代口語のこの世代バージョン若干過激編。典型として見せられたサンプルみたいな気分だったんです。なぜかって考えると。。。
ポツドールだから、私は人間の悪意とか、隠された本音とか、嫌な部分を観て嫌な気持ちになって帰りたかった。なのにずいぶんと素直ないい人しか出てこず。陥れる側の人なしで、騙されるというか素直に状況を受け入れる側の人ばっかりだった。暴力的なものを望むわけじゃないけど、そこにならあるはずの利己的な欲望とか、状況を受け入れられない足掻きとかが欲しかったなぁ。
でも、やっぱりいい部分はよくて、何よりやられた、と思ったのは最後のシーン。ちゃんと着替えて日常に戻るところまでを描くってこと。単にイベントを描くならここはないはず。イベントじゃなくてそこにいる人が生きる世界だから、どんなにかっこ悪くても元に戻る瞬間がある。そこまで含めて描いてるからこの脚本はすばらしい。脱いだパンツは履かなきゃ外には出られない。
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