グリング「吸血鬼」 2009/3/9 15:00
寝坊しちゃってあわてて行ったけど間に合った。よかった。逃したらもう代わりに行ける日はない。
いい作品が書けずに悩む脚本家。ある日大学時代の元カノが不審死を遂げたことを知る。彼女の生きた跡を取り憑かれたように探るうち、辿り着いたのは。
はぁ、すばらしい脚本ですわ。人生の楽しさとか苦しさとかいろいろ詰め込んでるのに、さらりと。スパイスもひねりも効かせ、でもストレートで。物語に取り込まれちゃいながらも冷静な部分もあるから、すごーく楽しむのが難しいです。つい自分と照らし合わせて考えちゃう。登場人物の生き方を観ながらつい自分の経験に寄って行って脱線し、そしてまた物語に戻る。そういう余白を持っているお話。そして終盤の展開も唸るほどのおもしろさ。
生きる目的、生きがい、ってなんなのか。仕事だったり家庭だったり、いろいろだけど、じゃあその成功って?なりふり構わず結果を出すことなのか、それともそこに至る過程なのか。仕事がうまくいっても痴呆の母親に自分のことを忘れられちゃったら?友達の人生を利用しても脚本が書ければいい?子供を生むことが幸せっていっても子供さえいればってわけじゃなく、パートナーがいることが必須だったり。じゃあパートナーってそんなに必要?
吸血鬼は二つの意味合いで出てきます。他人の人生を吸い取っても生き抜くってこと。赤ん坊が母親からお乳を吸い取る命のリレー。言葉でこれを説明されても、普段なら臭すぎって思うことが多いんだけど、ここまで至る過程で十分思考があったから、さらにここで深く深くはまります。
元カノ、元カレの高橋理恵子さんと杉山文雄さんもさることながら、周りの人々がすばらしいです。死体を発見するちんどん屋の親方や取引先の上司などを演じたみのすけさん、普段観るわりと主の演技だけじゃない抑えた雰囲気もいいな。ちんどん屋の妻、飲み屋の女、などの萩原利映さん、何を演じても安定感。コメディエンヌが多い平田敦子さんも、普通の主婦役。老人介護の場面での迫力は息を呑みました。介護を担うイライラした雰囲気から赤ちゃんを産んだ母の佇まい、圧巻です。
こういうお芝居一人で観ちゃうと、帰り道が辛いんだよな。考えちゃうし、孤独が身に染みる、良くも悪くもね涙が出そうになりながら、でもちょっと身体は温かくエネルギーを感じる不思議な状態です。
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