elePHANTMoon「成れの果て」 2009.5.21 19:30
一昨年の12月以来1年半ぶりの本公演。生きることに対する絶望のような違和感のようなしがらみから生まれる面倒くささのようなものを、さらにエグく視覚的に見せるこの劇団の作風がとても好きなので、ずっと楽しみにしてました。昨年の公演中止後の第1作。
田舎に住む姉(津留崎夏子)から久しぶりにかかってきた電話は結婚の報告。相手(永山智啓)はかつて妹(菊池佳南)をレイプした男だった。妹はあわてて田舎に帰り、二人の真意を確認し、そして。
さすがにさすがに、一息おいただけあってすばらしい作品。見た目上のどろどろは抑え気味にした分、人間の負の感情の見せ方に自分の体がこわばっていくのがわかる。
わかりやすく過去にレイプにあったという傷を抱える妹、レイプ犯という過去を知られながらもそれをネタにしている姉の婚約者、そのレイプ犯というエピソードを面白おかしく利用する婚約者の同僚、レイプネタを書こうとする小説家志望、人気者になるために事件の話をいいふらす姉妹の幼馴染、自分の口は臭いと思い込み手術のために姉妹の金を盗もうとする居候、リストラに合い再就職すると言っては婚活にせいを出す姉妹のおば、妹につるむゲイと嫉妬深いその彼氏、などなど一癖も二癖もある登場人物たちがたくさん。みんなみんなどこかのネジが外れていて、しかもそれを意識しているくせに意識に上らせまいと必死に押さえ込んでいる。お互いの傷を攻めることで自分の傷を隠し、なんとか均衡を保つ人々。どの一端が崩れたら。。。と怖くて怖くてたまらないんです。
俳優さんの見せる力が半端なくすごい。爆発し吐き出すのは簡単だけど、抑えに抑えた想いがその目の力や手のしぐさにじわっと染み出してくる。劇団員だけじゃなく客演の方々にも同じ空気の作り方や見せ方が浸透していて、どのシーンをとっても気が抜けない。
視覚的なエグさで好き嫌いが分かれがちなelePHANTMoonですが、そういうじんわりを引き出すような演出の細やかさが私は好きです。丁寧に丁寧にその人の中にある毒を吐き出させるというか。だから観てるこちらも体が反応して握り締めた手にどんどん力が入っていっちゃう。それが快感。
今回、何より好きだったのはラストシーン。登場人物の中では唯一善良そうに見えた姉の本音。幼馴染に向かってひどい言葉を吐いたりもしますが、何よりも怖かったのは、若いころからいつも妹に彼氏を略奪されていたというエピソードの挙句、「今度こそは取られなくて済むと思ったのに」という一言。鳥肌が立つと同時に涙が出ました。女って怖い、そしてけなげでいとおしい。
この着地の仕方がすごくelePHANTMoonらしくて大好き。
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