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コマツ企画「新釈 ヴェニスの呆人 2009」① 2009.8.27 19:00

アゴラ夏のサミットのトリ。半年間待っていたコマツ企画の初日。

2003年の作品の再演ということらしいんですが…。当日パンフによるとかなり書き替えられている様子。

家庭的にいろいろ問題がありながら成長し、大人になった花子の半生を振り帰る。かつて事件が起きた際のことを刑事に再現してみせる、といった形で。子供の頃の自分や家族と向き合った花子、そしてそのまわりの人々の姿。自分が主役でいたかった母親の犠牲になり、常に怪我をさせられ障害を持っていた長男・太郎、付き添わされる花子、母に窒息死させられた弟・次郎。何もしてくれなかった父。さらに病院で医師や看護師がからんで。

かなりなバカ話かと思って行ったら、意外にもかなりまっとうな作りのお話。まぁ笑いはあるものの、花子のトラウマ世界を芝居仕立てでみせていく難しめな構成。PPTによると演劇的ヒロイン症候群と主宰のこまつみちる氏が名付けた、自意識が強く常にまわりを観客とみなして自己演出する人間を描いた作品とのこと。うん、概念が難しい。

そんな感じでたぶん一回じゃいろいろとらえ切れておりません。だってそこにちゃんと個性と笑いを混ぜてくるんだもん。そっちにも気を取られますわ。家族の人間関係の危うさ、それを外部から眺める冷静な視線、巻き込まれてしまう病院の人々。過去を振り返り人に語り聞かせるという形にしていることで、主観的な部分と客観的な部分が浮き上がってくるように思えます。またその辺りが整理しにくい部分でもありますが、演出としておもしろくなっていったところじゃないかな、と思います。

コマツ企画のおもしろさとしてはやはり役者力、は外せません。初演にも出ていたという本井さんはびっくりするくらいあっさりですが。自己愛過剰の母親役の異儀田夏葉さんの、子供のことで追い詰められながらも実は自分自分なキャラの見せ方とか、大人花子のこまつさんとやり合う子供花子の中川鳶さんとか、シリアス面とそうじゃない部分とのバランス感覚がよすぎ。外側からの冷静目線の米田弥央さんのたたずまいとか、場からは浮きながらのこっちよりの立ち位置がなんか安心。刑事役の浦井さんがやや興奮気味にストレートに罵詈雑言をまくしたてる姿はなんか新鮮。

医師看護師夫婦役の川島潤哉さんと近藤美月さんはドリチョコでのカップルらしいコミカルさを醸し出しながら、重苦しい夫婦の感触もずっしりと。この二人のシーンは緊張感のある笑いがたまらないです。小劇場界最高の割れ鍋に綴じ蓋。と、おそらく本人達はまったくうれしくないだろう誉めコトバで讃えたくなります。

とりあえずとりこぼしが悔しいので、また観に行きます。こまつさんの頭の中に入り込んで楽しんでみたい。

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