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東京デスロック「平成二十三年のシェイクスピア SPECIAL STAGE 『WALTZ MACBETH』」2011.2.25 19:30

東京デスロックのキラリンクカンパニー卒業記念と、デスロック多田淳之介さんが担当したいわき総合高校演劇系列選択生徒の卒業公演、キラリ☆ふじみにて。私、デスロックのWALTZ MACBETH、ほんと好きみたいです。先月いわきアリオスに観に行き、3年前の初演の時の興奮を思い出しました。その後いろいろな作品を観てきましたが、改めて観るとやはりこれは傑作だと思いました。

初日はSPECIAL STAGEということで 『WALTZ MACBETH』のみの上演。初演と変わらず演出の多田さんからマクベスのストーリー説明の後、開演。

領地の奪い合いや殺し合い、勝利の喜び、不安、狂気、すべてを椅子取りで表現。手に入れたいのは自分の椅子。自分だけの人に譲れない椅子。椅子を手に入れたら安心して浮かれ踊り、誰かが自分の椅子に動かしているような妄想に怯える。一人に一つ椅子があればあったで落ち着きを失いあがいてみたり。人間の生き様って全部椅子取りで表せるんだ、って、滑稽だったり感じ入ったり。

そのいちいちぴったりはまっていく奇跡が、マクベスと椅子取りを出会わせた多田マジック。

囲み舞台が3面になったり、ラップや方言のセリフが入ったり、初演とはちょこちょこ変化しているけど、そういう目に見える変化よりも、自分と作品の対峙の仕方とか、考えることや感じることの変化とかが楽しい。近頃ちょっと私実はお芝居観るの好きじゃないのかも、と思ったりしていたのだけど、こういう作品に出会うとやっぱり好きって思える。最近の多田作品の当日パンフとかに記されているけど、演劇を観る体験っていうのは改めて自分と出会う体験なんだな、って実感します。この作品を観てこんなふうに感じる自分。余白を持ってそれを受け止めてくれる作品に出会えることが幸せ。

今日印象に残ったところ。まずは暗転明けのオープニング。舞台上に和服姿の一人の男(永井秀樹)。目が覚めたらなんだかよくわからない場所にいちゃった、異国へどこでもドア?もしくはタイムスリップした?みたいななんとも不安そうな照れ臭そうな顔でまわりを見渡し会釈。この会釈、最初は観客に向かっているようにも見えたけど、繰り返していくうちに何か私たちには見えないものに挨拶しているように見えてきて背筋が冷たくなる!死人の多いお話からの連想なのかもしれないけど、かなりのホラー感。出てくる人皆舞台の外側に向かって愛想振りまくからますます、ヤバいモノが背後にいるような気配。

2つ目は後半、森が動き始めるあたりからの台詞のやりとり。決して言葉が聞き取れたわけでもないのに、あまりにも強欲で間抜けで嫉妬深く猜疑心だらけの人間達に歴史が重なり、古くはマクベスのモデルがいたという1100年代とシェイクスピアの1500~1600年代、21世紀の今が一つになったように感じた瞬間が!いつもなら人の動きを空気で感じたいがためになるべく舞台に近い席に陣取っているんだけど、今日はなぜか物理的な空気の動きじゃなく「時間」が感じられました。ものすごい俯瞰で眺めた気分。壮大な時間の流れに身を委ねたっていう感じ。

3つ目はやはり俳優さんたちのへとへとな姿。終盤、マクベスが命をあきらめても戦うシーン、俳優たちがひたすら走り、踊り、暴れます。いいな、真剣に疲れてるって。特に夏目慎也さんの欽ちゃん走りにも見える、みっともない走りっぷり。ステキすぎる。みんなが息を切らせ、苦しそうに倒れていく様子は、たとえそれが全て演技であったとしても、私は大好きです。

WALTZ MACBETHはいつまでも再演を繰り返して欲しい作品です。たとえ俳優さんが動けなくなっても(笑)。

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