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クロムモリブデン「裸の女を持つ男」①2011/4/17 19:00 ②4/20 19:30

私は同じ演目のお芝居を二度三度観るのが大好きです。適応力が低いので一度では楽しみかたがわからず、味わいきれてないような不満足感を感じたりするからです。だからネタバレの概念があまりよくわかりません。一度観て、どういう設定で次にどんな台詞が飛び出して、どんなリアクションが出るのか、わかっていてもおもしろいのが演劇だと思っています。

繰り返して観てわかる部分が増えていっておもしろい作品もあれば、どんどんわからなくなってそれが魅力になる作品もある。クロムモリブデンは後者な気がします。単にわかりにくいんじゃなくて、全体は見えてきてどんどん面白くなってきた、なんかすごく興奮している、けど何を自分が面白がってるのかよくわからない、自分の奥底にあるものが引っ張られて血湧き肉踊る感触にわくわくするっていう。

はい、今回も超楽しい!それはもちろんトラムの大舞台ってこともあるし、久しぶりに板倉チヒロさんが出演してクロムメンバー揃い踏みってこともあるし、客演の辰巳智秋さんの引力もある。でもそれだけじゃなく、よくわからない興奮に捕まれちゃってるところが大きい。

違法ドラッグに塗れてモーテルで女を死なせてしまった男、アイドルなのにドラッグをやっちゃった女、その周りの人々の話。

もちろん題材は昨年のあの事件とあの事件なんでしょう。でも、そういうテーマとかモチーフとかは私にとってはどうでもいいこと。まぁ、そういう出来事があったことで作家の青木秀樹さんのモチベーションがあがったならその事件は大事だけど。どこからインスピレーションを受けようが、そこから劇団員たちをこんな風に動かしてこんな言葉を吐かせているっていうところに私はどうにも惹かれてしまうんです。

青木さんの世界の感じ方、みたいな部分が私の興奮につながっているんじゃないかと思います。同じ事件でも衝撃の受け方は違うし、そこからお話を作るとしたら広げ方は千差万別。私はクロムのその広がり具合にリンクしちゃってます。

毎回ではありますが、登場人物のキャラの強さは圧巻です。いろんな意味で自分が強い。個々には深く突っ込まれてないのにその魅力が光ってる。女を死なせた漫画家を守ろうとしつつ自分の仕事しか考えていない編集者(渡邉とかげ)の一見普通そうなのに会話の流れなんか気にしないジコチュー加減、モーテルの支配人をしながら母親に精神的に圧倒され続けてる男(花戸祐介)の情けないのになんだかいい人な感じ、モーテルで監禁されている歌手(幸田尚子)の派手でおかしそうなのに真っ当な理屈に沿って生きているところ、この辺りは物語の本筋とは関係ないのにすごく力強くて生き生きしている。

その生き生きしている感じをさらに生き生きさせる役者が揃っているのも好きなところ。

今回は特に、大きい舞台で俳優が動いているせいか、髪型とかメイクとか体形とか衣装とかでばっちりインパクトを残している俳優さんが多いせいか、なんだか青木さんの脳内を覗いている感じがしちゃいました。俳優さんたちはみんなフィギュアとして青木さんの中にいて、動いてたり動かされたりしているイメージ。フィギュアでごっこ遊びをしているうちにフィギュアが自分勝手に動いているような。

今回、特に終盤のパフォーマンスが大好きです。じわじわ、じわじわと、テンションが上がっていき、いつのまにやら拳が握り締められて、逆に顔の筋肉はだらしなく弛緩して。これを観るためなら何度でも足を運びたいと思ってしまいました。この興奮が自分でも一番わからないところです。解釈できるわけでもない。俳優のパフォーマンスだから美しいだけではない。内々から刺激されてぬおぉーって突き動かされる衝動で、それまでの物語とか、オチの付け方とか、流れとか、そういうものじゃないな、って実感。このわからなさがたまりません。

地震でちょっと何が観たいのか迷いが出ていたところに、大きなエネルギーをもらいました。

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