« 2011年4月 | トップページ | 2011年6月 »

2011年5月

七里ガ浜オールスターズ×王子小劇場「パ・ド・ドゥ」 2011/5/25 15:00

赤ペン瀧川先生でお馴染みの瀧川英次さんのユニット、七里ガ浜オールスターズが王子の×王子小劇場シリーズに登場。まぁその登場の仕方もカッコいいことに伊東沙保さんとの二人芝居。わあぁぁ!

恋人への殺人未遂容疑で拘置中の日向草子(伊東沙保)。彼女が弁護を頼んだのは元夫の弁護士・名塚憲治(瀧川英次)。彼女の真意は、そして事件の真相は?

ヤバい、、こんなに芝居に観入ってしまったのは久しぶりですわ。全く時間を感じず、ひたすらのめり込んだ。序盤、二人の関係が明らかになり、事件について狐と狸の化かし合いのような会話のうちはそれほどでもなかったんですが。事件の真相に近づき、彼女が情念を剥き出してくるに従って、もう観入って魅入られて。

まずね、劇場の使い方がすごく面白い。開演前はポツンと浮いた雰囲気の接見室が、開演と同時に息苦しくなるほどの密室に。こんな使い方もあるか、と感心。

そんな狭く濃い空間の中、やはりここまでグッと捕まれたのはお二人の俳優として、人としての存在の力かと思いました。もちろんストーリー展開もワクワクするけど、それだけじゃ私は騙されない(笑)。女の業って怖いなぁ、イヤだなぁ、汚ないなぁ、まぁそれに対する男ってバカだし情けないし、なんて冷静に観てたはずなのに、ふとした瞬間に二人の産み出す異空間、完全に演劇と現実がごちゃまぜになっちゃって自分がどこにいるんだかわからなくなってる状態に引きずり込まれていて、ああ、これはお芝居だ、って自分に言い聞かせてあげないと戻って来られなくなってる感じ。で、一旦線を引いて客に戻るんだけど、また女やら男やらグジャグジャした中に入っちゃって、夢中になってるんです。こんな感じはなかなかない。もっともっと二人の過去を未来を、知りたい!

瀧川さんも伊東さんも、それぞれいろいろな作品で観ているし、俳優だということも知っているのに、日向さんと名塚さんにしか見えなくなっちゃってる。舞台上、そこで必死に生きている人。そこに取り込まれちゃうと、楽しい夢の途中で醒めたくないようにどんどこ浸りたくなる。

台詞の量が膨大だからお二人とも結構噛んでるんだけど、そんなことは問題にならないくらいの俳優力。

脚本とお二人の相性も非常によかった。男だ女だ、愛だ浮気だ、未練だ怨みだ、っていう情念深い濃い部分が、お二人の濃さにぴったり。目力や仕草、髪型や立ち座りの姿からも見て取れました。

つくづく、内容も出来栄えもおっそろしい作品でした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

M&Oplays プロデュース「鎌塚氏、放り投げる」2011/5/21 14:00

はい、またちょっとお高いお芝居を観ようシリーズです。本多劇場も久しぶりだなー。三宅弘城さん好きなんです。ペンギンプルペイルパイルズの倉持裕さんの作演出だし。

とある華族、羽島家に仕える鎌塚氏。親の代からの羽島家執事。家の使用人たちを取り仕切り、主君の危機を救おうと奔走する、スーパー執事の鎌塚アカシ(三宅弘城)。主君の財政難を救うために格下の客・堂田夫妻(片桐仁・広岡由里子)からどうにかお金をもぎ取ろうとしたり、同僚の女中(ともさかりえ)と堂田家の執事(玉置孝匡)の結婚を祝おうとしたり。

脚本も演出も俳優たちも、なんだかどこまでもキュートでコミカル。好き好き、愛しちゃうー。うそ臭くてバカらしいのにね。

変な設定の中でもキャラクターたちが一生懸命生きていて、どの人も自分の生き様をちゃあんと全うしていて、仲間たちや相手のことをすごく考えていて、っていう根本的なあったかさがいとおしいんだろうな。すごいバカなのに、ウケを狙ってバカをしてるんじゃないから。だから好きになっちゃう。

倉持さんの持っている世界の中でもずいぶん優しい感じのところに、三宅さんの万人受けする素敵な間抜けさ、そこに付けこむ気の強い女中や敵の男爵たちの憎めなさ、キャスティングも演出も完璧。

タイトルにもつながるラストシーン、なんて美しい!ここまで印象に残るシーンもない。私、わりとラストシーンをすぐ忘れちゃうんです。覚えてようとしても忘れる情けない記憶力なんです。けどこのシーンは格別。そっか、鎌塚氏、放り投げちゃうんだぁぁ。やっぱりここでも愛。

この鎌塚氏、シリーズ化したらいいと思います。執事・鎌塚氏は見た!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ペテカン「青に白」2011/5/22 13:00

ペテカンもすっかりRED/THEATER定着しましたね。TOPSからの移動。定番のスタイルに安心できる劇団の一つ。今回の評判のよさも惹かれました。

両親が思い出の地へ旅行中、父が死んだ。あとに残された呆けた母を迎えに行く私と、結婚適齢期になっているその娘。三世代の葛藤と周りを取り巻く人々。

こういうベタな設定、典型的なキャラクター、それがペテカンの押しどころ。それが生きていてとても観やすい。

呆けてるおばあちゃん(濱崎けい子)、だけどたまに「呆けて見せるのも大変」などとまるでまともかのような発言を効かせ、けど葬式中などいざと言うときには掬いきれない呆けっぷり。そのおばあちゃんを大事にしつつもほんとは生みたかったわけじゃない、などと言われた私(田中真弓)。結婚しようとしない娘(長峰みのり)にも同じような発言をしてしまい、反発されても素直に自分の過ちを認めることができず。夫(山口良一)は娘よりも若い女(帯金ゆかり)と不倫をしており、今にも離婚をしそうだけどせず。そんな不倫を知っている娘も親の姿や自分の結婚について悩み。

三世代の女の物語だけれど、やっぱりそこには外せない男たちの存在があり、その覗かせ方がうまい。直接的に主張するわけではないのに影や吐く言葉の感触がしっかり残る。

ペテカンらしい笑いの盛り込み方も愛せる。お葬式の大事な場面でやらかし続ける痴呆の葬儀社の社員たち、愛の賛歌を熱唱する四条久美子さん、こんなきれいな顔して何やってくれるんだか。娘のフィアンセ役の濱田龍司さんのうっとうしいのにまっすぐな姿。頬っぺたまっピンクに塗って、かわいらしくしたたかに愛人を演じる帯金ゆかりさん。

でも、私は泣けませんでした。なんでしょ?うーん。親子三代の物語なんだけど、それ以外のエピソードも多いからか、思ったほど私やその娘に感情移入ができなかったんです。私とその娘はわりと反発しあうんだけど、その反発する根拠とかに納得できないうちに話しが進んでたみたいな感じで。もっともっとじっくりその関係性の深さを見たかった。男たちの存在の重みだけじゃなく、女同士の確執が見えづらいように思いました。なぜ、母と娘がここまでいがみあうのか、その筋道に納得できず。

こういうのって自分と母の関係性とかから導き出される感覚なのかもしれませんね。自分と母っていう揺るがせようがないベースがあるから、悲鳴のように相手を非難するっていう態度に、理解はもてるけど共感には至らなかった。私の感覚として、です。

そしてそれだけ反発しあうなら、最後までそのままいって欲しかったのもある。終わり方に不満はないけど、キレイすぎるとね、微笑。濱崎さん、田中さんっていうベテランを迎えているのだからぶつかり合いも見たかったです。

次回公演が「彼のことを知る旅に出る」!!!すっごく好きだったぁ。今から泣ける!楽しみすぎる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

劇団まるだし「広報まるだ」2011/5/22 19:00

バナナ学園の興奮覚めやらぬまま、下北沢まで移動。劇団まるだしの旗揚げ公演、出自やら主宰の方はぜんぜん知らないけど、作家陣にナカゴー鎌田氏やロリータ男爵田辺氏や犬と串モラル氏。これはすごい、と思ったらさらに出演には快快中林舞さんやはえぎわ川上友里さんや大人計画顔田顔彦さん、猫ホテ森田ガンツさん、松浦羽伽子さん、すごくない?ちょっと怖いもの見たさなくらい。それがoffoffで。

15本からなるコント。丸田市のなんでもやる課が受けたさまざまな依頼を見せていく。

笑いはかなり緩くて、期待したほど笑ったわけでもありませんでした。一番期待したナカゴー鎌田さんの作は15本中一本だけだったし。どれもぶっとんでたりせず、ほんとうになんでもやる課に持ち込まれそうな柔らかな笑い。

けど俳優さんたちのベテラン芸はすごいね。川上友里さんの顔芸、見てられないほどひどい顔してるのに、目が離せない。中林舞さんはちょっとかわいらしく、色気ある感じが他では観られないレアな雰囲気。

こんだけのメンバーをoffoffで観られたことには感謝。だけど、もうちょっとはじけた笑いを観たかったなぁ。ゆるいとかやさしいとかを売りにしたいなら作家さんはもっと違う感じがいいだろうし。全体として微妙。劇団と言うからには今後も活動するんだろうけど、どんな風になるのかしら。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

バナナ学園純情乙女組×王子小劇場「バナナ学園★王子大大大大大作戦」2011/5/22 16:00

王子小劇場一押しのバナナ学園、×王子小劇場シリーズとして入場者数に応じて劇場と劇団でチケット代負担というシステムでの最初の公演。その仕組みおもしろい。

今回は本公演ではなく、あくまでおはぎライブ。おはぎライブでの本公演。

正直言って行くか迷いました。好きなんですけど、あのエネルギー。だけどだんだん度を越してる感じがしていたのと、自分がオールスタンディングに耐えられるのかと。かなり体力的に余裕がある時じゃないとだめかな、なんて。去年の秋の闘争の時は、早稲田には行けたけど王子には行けず。。。

自分的な気持ちとしては結構ナナメ下方向からの眺めなつもりだったんだけど、どういうことかやっぱり入場しちゃうとテンション上がりまくり!おかしいな。ニヤニヤわくわくがどんどこ心臓刺激している。そういうのがめんどくさかったはずなのに、すごく気持ちいい。

開演10分押しくらいで始まった公演、どこで何が起こっているやら全体像は全然わからない。ま、私が前へ前への人間だからってのもあるけど。けどめちゃくちゃに汚れてはいるのにどこかに秩序はあり、ちゃんとしたショーとしての構成はさすが二階堂瞳子。緩急きっちり、ところどころでダメだしと称した振り返りがあることで復習ができてる感じも。

曲もあんまり聞き取れなかったけど、でも部分部分で結構アニメやヲタじゃない普通の名曲もあって。featuring七味まゆ味の天城越えだとかね。

全体の曲目、どこかで知りたいけど発表しているのかしら。

浅川千絵さん扮するロロロが目立たないくらいだった。もっと頭おかしい感じでかきまわして欲しかった。劇団員の前園あかりさん、ほんと頭の振りの激しさが大好きで大好きで。今回ちょっと女らしくかわいくなっていてドキドキ。あと見どころはザネリさんのスクール水着。ちびっこ戸谷絵里さんもキュート。

同じようにいろいろ飛んでくるゴキブリ・コンビナートに比べて、安全面や客の不安への配慮は全然足りていない感じはするけど、すんなり受け入れられる楽しさ。全体の天真爛漫さを愛せる。

水とか食べ物とか飛んでくるのはまだしも、人間がダイブしてきたのは予想外のタイミングでもあり、急に降って直撃来たからしばらく首痛かったな。

やりたいことを無茶いっぱいにやりながら、ぎりぎりのところで会場全体への愛があるから受け入れられる。過去のおはぎライブのyou tubeでの映像を見たりすると、ここまでエスカレートしないとだめなのかなぁっていう感覚もなくはないけど。

千秋楽だったからなのか、いつもやっているのか、来場者全員に表彰状をくださったのはなんかうれしかった。先日の羽衣LIVEでもだったけど、単に名前を挙げるだけでも客としてなんか一体感。一緒にヲタ芸やれたのも幸せ。

終わってみるとやっぱり身体のしんどさはあったみたい。なんか残りそう。だけど心の充実は想像以上でした。

バナナ学園は普通の本公演も大好きなので、ぜひライブだけじゃなく学園ドラマもまた見せて欲しいです。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

渡辺源四郎商店第13回二本立て公演「あしたはどっちだ」 2011/5/4 19:00 5/5 19:00

東京公演初日。東京に来てくれてホントに嬉しい。「どんとゆけ」の後日談。

死刑執行人制度が制定されている社会。死刑囚は死刑執行人である被害者遺族の手によって処刑される。以前は絞首刑のみだったが、法が改正され現在は処刑法を選べるようになっている。5回目の獄中結婚をした青木しの(工藤由佳子)の今回の夫(佐藤誠)は、死刑になりたくて幼稚園を襲撃した犯人。死刑執行人達は被害者が殺害された方法、つまり金属バットによる撲殺で処刑しようとするが。

「どんとゆけ」を思い出させるような部屋の雰囲気、だけど客席は柵の後ろになっており、まるで裁判の傍聴席。

テーマは重く、しかも全体の雰囲気も重い。「どんとゆけ」とどうしても比較してしまうけれど、死刑執行人制度というファンタジーを楽しむ空気や死刑囚としか結婚しないしのの軽やかさも薄い。今回のテーマが死刑にされたい犯罪者への本当の罰とは何なのかいうことだからかな。憎悪とか狂気とか絶望とか負の感情がモリモリしてて怖かった。

私としては、なべげんは重苦しいテーマでもさらっととぼけた笑いを重ねながら、しんみりみせてくれるところが好きなので、この重さは苦しくて、いつものようには泣けなかったのが残念でした。号泣するつもりだったから。あり得ない設定なのに普通にそれを受け入れ、さらにあり得ない設定の登場人物に感情移入できてしまうってとこに巧みさを感じて唸るんだけど、ね。悲しい終わり方でもほっこりできる余白が残されているからいつもは救われるんだけど、今回は直球フルスイングで、死刑囚と遺族の果てが示されただけだったのがつらかったな。

かといってどこも足りないわけではなく作品としては十分すばらしい。登場人物それぞれの思いがビンビン強く、一瞬たりとも気を抜けない。死刑囚を演じた佐藤誠さんの目だけの薄ら笑いには寒気がしました。被害者の母役の柿崎彩香さんの睨みやバットの迫力、それもものすごかったけど、バットが目の前で振り回され、あれだけの憎しみを目の前で見せつけられても平然とする犯人にはもう。。。さらに刑が執行されないとなった瞬間のしの・工藤由佳子さんの表情の凍りつき方ったら…。

逆に全体の軽やかさがない分、人間としてのドロドロさがしっかり見えたのはおもしろかったです。死刑囚の剥き出しの悪意、しののエロス、遺族の憎しみ。

俳優さんの見せ場、いい。今回のシリアスな場面で宮越さんの台詞をどうするかと思ったら、うまいこと読み上げていましたね。気弱で息子にどうにも対処できない親の罪をしっかと背負ってました。

あぁ、でもやっぱり宙に浮くようなファンタジーを感じた上で死刑囚の思いを考えたかったな。

二日目に郷田マモラ先生のトークがあり拝聴しました。マンガアクションにサインももらっちゃったミーハーです。このコラボはおもしろかったけど、もしかしたらコラボだからいつものなべげんらしいやんわりさが薄れたのかなとも思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

演劇ワークショップ・ファシリテーター養成講座成果発表会「わたしたちにできる、10のこと」ワークショップ 『え、そんなこと考えてたの?』 2011/5/4 11:00~14:00

久しぶりにワークショップなるものに行ってみました。アゴラ劇場主催でやっている、演劇ワークショップ・ファシリテーター養成講座成果発表会「わたしたちにできる、10のこと」~【社会/教育/演劇】を越境してつなぐ、新作ワークショップ発表会~の一つ、青年団の俳優、村井まどかさんをファシリテーターとした『え、そんなこと考えてたの?』。演劇関係だけど一般向けのモノ。やるのは恥ずかしいからイヤなんだけど興味はあるんですよね。

5~6人のグループに分かれて。第一の作業。まずは「話す人」2人、「見る人」1,2人、「書く人」2人と役割分担。私は「話す人」でした。話す人が二人で自由に会話をする、それを書く人が全て書き取る、見る人は話している間の姿勢やジェスチャーや目線などを見ておく。会話が終わったらそれを再現するよう指示されます。書き取ったモノをもとに、見たことや話している時の心情などを書き加えていきます。再現をしながらそのときの状態をさらに拾っていって。

新鮮な発見が色々ありました。普通のコミュニケーションをしているときの自分の思考回路、内容の選び方、話している姿勢、目線、興味の方向、、、普段無意識にやっていることの中にものすごい情報量。再現しようとするとその膨大さに唖然。さらに自分の意識と人からの見え方の間にはものすごい隔たりがあって、自分はこういうつもりでやっていたことが全く逆の意味にとられていたり。例えば私としては話を振ろうとしたのに、見る側はからは完全に受け手のように思われていたり。普通それを言葉として伝え合うことがないから全然気づかなかった。おもしろい。再現してみるとまた、覚えているようで覚えてないし、再現することでそのとき考えていたことが鮮やかに蘇ってきたり。再現しようと思ったらうまくいかず、変な間ができてしまったりして、やっている側は失敗と思っても、観ている側からはその間がまさに最初の会話と同じように見えていて、すごく誉められちゃったり。不思議体験。こういうことを普段俳優さんたちは体験してるんですね。

第二の作業。再現した会話をグループごとに発表。またそれもおもしろい。会話の内容や設定がさまざまで、同じように指示されて同じ作業に取り組んだはずなのに、結構バリエーションに富んだ状態でした。

第三の作業。それぞれのグループで書き起こしたテキストを違うグループへ渡して、再現、ていうかもうテキストからの構成だから上演ですね。相手への興味の持ち方の違いとかが会話の内容から窺われ、その度合いによって再現しやすさが違うように私は感じました。当たり障りのない天気の話とか、ある意味相手への関心はなく、相手の話をろくに聞かないでも成立しちゃう。けど相手の情報を得ようと躍起になってたり、話が続かない間を恐れるような会話の場合、間とかの再現はかなり難しいし、文字に書き起こしたものを読んでも意味が分かりにくい。再現を演劇として見てみると、前者の会話は戯曲となっても広がりがあってやり易いし、いろんな展開が考えられるけど、後者はシチュエーションの限定された、かなりやりにくい戯曲に思えました。

この作業は状況を変えたり人数を変えたり、オープニングやエンディングはつけ足ししたりもOK。時候の世間話が感じ悪いタクシー運転手とテンション高い客との会話へと変貌し、インタビュー形式の会話が婚活の設定へと化けました。このテキストからこの発想が!って正直ビックリ。テキストから核となると思えるエッセンスを抽出して膨らます、これって演出家のお仕事じゃん!俄然楽しくなりました。そうか、演出家さんの頭の中ってこういうことなのね。戯曲を読むってそういう意味ねって、体感して納得。すごーい、楽しい。

ファシリテーターの村井さんがテーマを決めてこのワークショップが生まれたそうですが、介護の仕事をされているときの相手と自分の会話っていうところからテーマが決まったそうです。確かに二人の会話って他に聞いている人がいるでもないし、なかなか振り返ることもない。けどちゃんと話せていたか気になる。村井さん自身がこのワークショップを受けたいとおっしゃっていました。

仕切りは不慣れなのか、受け手としてはちょっと指示されたことがわかりにくくとまどうこともありましたが、全体的な楽しい雰囲気はよかったです。

コミュニケーションについての考察から演劇ができるまでの筋道、全然関係ないようでものすごく密接でした。この2つを体験できてとっても濃い時間を頂きました。

このワークショップ、いろいろ種類あるみたいだけど一般向けも多いからまた参加してみたいな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

平田オリザ演劇展vol.1「走りながら眠れ」2011/5/8 15:00

平田オリザさんの演劇展、3週間にわたって開催中だけれども時間が不規則なのと演目の豊富さで全然行けない。。。この1作品だけかも。

でも平田オリザ作品、できすぎている感や計算されつくしている出来上がりがちょびっと苦手な自分としてはこれもそれほどの期待はなく。

大杉栄(古屋隆太)とその妻(能島瑞穂)の二人芝居。二人の日常を静かに見せます。

いや、しっとりとしてバカバカしいくらい日常で、でもちょっぴりエロくってドキドキする。素敵な夫婦の姿でした。こんな夫婦になれるならぜひとも結婚したい。時代も時代、関東大震災の前後、こんな頃にこんなにウイットに富んだ会話を交わし、しっかりと心が交流している夫婦。

妻役の能島瑞穂さん、清楚でおしとやかな雰囲気なのに、ちらちらと見せる女な部分、メス的な部分。完全に夫を翻弄し、でも計算と言うよりのびのびと自然な姿が素晴らしく魅力的。また声がいいんだな。

たまたま帰りの電車で、1000年前の平安時代の妻選びは今で言う家庭的ってことじゃなく、ラブレター代わりの短歌で誘惑されてもさらりとかわせる知性といざと言うときに招き入れられるたくましさ、が求められていた、みたいな記事が。まさにこの夫婦はそんな感じ。ツンデレを地で行ってる。かっこいいな。結局帰り着くのはそこか。

ということで、平田オリザ作品、やっぱりすげえ。間の取り方とか、空気の凍りつかせ方とか、二人の間の無駄な動きとか、すべて計算されているんだろうけど、それでもドキドキしましたから。

これ、せっかく二人芝居でセットもそれほどなくできるんだから、いろいろな組み合わせでたっぷりやってくれたらいいのに。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

箱庭円舞曲第十六楽章「珍しい凡人」2011/5/8 17:00

毎度ながらタイトルにそそられる箱庭円舞曲。今回は駅前劇場で、対面舞台、観る場所によって見え方が大分違うとの評判を聞き、行く前からどこに座ろうかわくわく。結局、基本的に好きな普段の客席側、一番前の真ん中辺にしました。迷ってないじゃん、いつもどおりじゃん。

高校教師の兄(井上裕朗)とアート系のNPOを立ち上げようとしている弟(玉置玲央)。同じ敷地内にいながらほとんど交流はなし。兄は妻(ザンヨウコ)と息子(金丸慎太郎)と暮らしており、時折独身ニートの妻の妹(湯舟すぴか)が金の無心に来ている。弟は芸術には興味なさそうな行政書士の服部(片桐はづき)に心を惹かれつつ、芸術家・光岡(須貝英)とアートを支えるために運動している。兄が裁判員に選出されたり、弟がストーカーまがいの女(小笠原結)に追い回されたり、せっかく設立できそうだったNPOにネット上でいちゃもんがついちゃったりして。。。

兄は教師としての仕事・裁判員としての立場を抱えつつ昔の教え子に慕われたり、施設に入っている親のことを考えたり。弟は芸術家としての挫折から支える側への転向に考えることがあったり。兄の妻は自分と自分周りの家族を無意識のうちにきっちり守ろうとして日常へ日常へと帰る。逆に守るもののない妹は自分の日常から逃げようと、無責任にネットに噂を流しては責任逃れをする。どこまでも否定されながら躊躇なく相手への想いを押し付け続けるストーカー女や、先生への初恋を守り続けた行政書士、それぞれの立場や事情がはっきり見えて、わかりやすい。

そういう風にどの登場人物にも背景となるストーリーが用意されており、生きていくことへの肯定やら否定やら、人や自分の生き方に対する批判やら反省やら、何があっても日常は日常に埋没させるたくましさやら、初恋の甘さやら苦さやら、アートへの想いやら、もつれにもつれまくってます。ものすごく盛りだくさん。けどそのもつれはなーんとなく一本一本の糸が見えていてしっかりたどることができ、混乱はしません。観終えて頭のなかにグシャグシャ丸まっているけど、どの糸を手繰って反芻しようかと考えるとどれもちゃんときれいに一本ずつほどける。でも全体としてしまっておくにはグシャグシャさせといたほうが収まりがいい。そのグシャグシャが作品の持っているパワーな気がしました。

こんな時期だから、って公演を打つにあたって、すごくすごくいろいろ考えたんだろうなっていうなんとも素直な感じが伝わり、応援したくなりました。

俳優さんたちもホントよかったな。姉役のザンヨウコさんのふてぶてしさ、口の軽さ、スナック菓子の食べ方、どこまでも完全にオバチャン。息子や夫の前ではちょびっとだけ女になったりするのもかわいくて。弟役の玉置玲央さんは立ち姿がいい。勢いのある状態も消沈した状態も。片桐はづきさんはどこの作品で見ても、あれ、これが片桐はづき?っていう意外さや新鮮さを感じますが、今回はとってもピュアな女性、だけどその怨念は凄まじい。なんといっても私的敢闘賞は清水穂奈美さんの佇まい。怒っていてもいい具合に温度が低い。そのテンションでの感情表現がすごく印象に残ります。あと、手の動き、指の表情にまで力を感じました。

マチソワあったら作り手としては辛そうではありますが、平日のマチネがもっとあったらもう一回観られたのに~と歯軋りする観客でありました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ブス会第2回「淑女」2011/5/3 14:30

ブス会ようやくチケット取れました。ある意味予想はできるけど、なんだか観たい。ある一定のクオリティー保障のある団体かと思える。

清掃会社に勤める4人の女。リーダー格の前田(もたい陽子)、リーダーに媚び諂う鈴木(岩本えり)、モデルをしたり女社会からやや逸脱する吉岡(遠藤留奈)、新人だけど何か裏がありそうな小島(望月綾乃)。ま、ここまでの女優が集まっているのもぞわっと背筋を撫ぜる感じで。

女が集まった時の居心地のよさと悪さを知り尽くし、しかもこの年齢特有の相手への距離の詰め方をとっても上手に切り取った作品。

リーダーの前田キャラは女社会のリーダーの割りにさばさばして付き合いやすそうなおばちゃん。ここはおばちゃん、ってのがミソで、だから客観的に自分を置けている、けど自由におやじギャグを放ち続けたりする。鈴木を演じる岩本えりさんのオバちゃん具合が本当に本当にいやらしく、素晴らしいくらいにねちっこく、15年位前の結婚に夢見てた頃なら好きになった人に無言電話をかけちゃってたような雰囲気を醸し出している。に対して、女社会からの離脱はできないことを知っているからどうにか自分の居心地いい部分だけを使ってやろうとするしたたかな遠藤さんのキャラは、ブス会での定番になればいいといいくらいあっけらかんとしててすっきりする。望月さんはこんな地味な現場をライターとして雑誌に載せようとするだけに野心的ではあるから、やはり年代としても新人類って言う扱い。

テンポもよく時間的にも短く、わかりやすい、非常に優等生な作品。でもやっぱり面白いです。女子の集いだからってところで、構成や空気作りって言う演出部分と、演出家に信頼されている濃ゆくて堅い女優陣が両翼として支えあってる。

堅実だけど、ホームラン的な要素はないのが少し残念。ポツの女シリーズだったらも少し冒険もあったのかなとか思ってしまう部分も含めて。たぶん期待が大きいからもっともっと、と思ってしまうんですね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ナカゴー特別劇場 vol.4「月餅」2011/5/1 20:00

ナカゴーラストは日を変えて。最初2本でナカゴーの魅力を堪能した気がするから、これはどうくるのか期待やら不安やら。

いじめ相手だった友達・赤羽くん(鎌田順也)が転校することになり、校舎裏に呼び出して謝ろうとする江良ちゃん(日野早希子)。江良ちゃんの謝りぶりを確認しようと影から覗く顔ちゃん(森勢ちひろ)、ヨーヨーマ(正木尚哉)、馬(泉政宏)。謝り方が高飛車で全く謝ってないとダメ出しをされ、謝り直しに行くことになった江良ちゃん、その途中で顔ちゃんのおうちに寄らなくちゃならなくなり、寄ってみると顔ちゃんのお姉さん(神戸アキコ)とその彼氏(篠原正明)がとんでもないことをしていて…。

ナカゴーのザ・中学生!いや、制服は着てるけど中身は小学生だな。その会話だけでもぶっ飛ばされるのに、まるでそれはおまけかのような後半の展開。恐れ入ります。

ナカゴーは、子供が子供なりの理屈をつけてどうにか相手を丸め込み、自分の意見に賛同させようとする様子を描くのがとても上手。夢と甘酸っぱさを混ぜこんだ回想の中の中学生じゃなくて、ホントにこんなこと考えてたよな、子供ってどこまでも自分本意で勝手で残酷だったよな、相手を出し抜いて自分の味方を増やそうっていう浅ましい考えだったよなっていうのをがんがん並べられてうっかり歯軋りしそうになるような子供像。前半はそんな苦々しくかわいい会話を。笑いながら心がちょびっと痛い。

オープニングのの鎌田氏と日野さんの会話は、その場面のためだけに観に行く価値アリ。あれが延々続いても私は満足だな。それだけ定番でもあり、気持ち悪くもあり、忘れたい中学時代でもあり、って感じ。

後半は窮地に陥った時の、そんな場面でもやっぱりずるい子供たちが堪能できます。さらに神戸さんや篠原さんといった気持ちの悪い大人が子供の窮地を作り出してるのが、マジ怖!これは失禁モノです。

やっぱりハマる、癖になる!ナカゴー観とかなくちゃダメ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ナカゴー特別劇場 vol.4「パイナップルの食べすぎ」2011/4/30 20:00

ナカゴー、続いて2本目。阿佐ヶ谷はすごくおもしろくて住んでみたい雰囲気だけど、ちょっと時間潰すには向いてない感じで、ぶらぶらをもてあましてから。よそ者だからなぁ、仕方ないけど、溶け込みたいな。

公演タイトルにもなっているこの作品。確かに外部からの客演が多く期待大。

かわいらしいペット(掃除機)を飼っているカップル(加瀬澤拓未・藤原よしこ)。遊びに来るご近所のなかさん(名嘉友美)やはな(鈴木潤子)。そこにペットを亡くした寂しい女(墨井鯨子)がやってきて。

掃除機がペットっていうワンアイディアだけでも成り立ってしまいそうな面子。だけどさらに攻めに入り、雰囲気壊すまで墨井さんががんがんと。まじクレームで周りの人を攻撃します。誰対象でもなく激しくののしり、罵っているうちにさらに誰が攻撃対象だかわからなくなって手当たりしだいに。罵倒はループしてとりあえず隣にいる人を攻撃するかのような。

かなりやばい。墨井鯨子さんのテンション高く頭おかしいキャラがどこまでも突き抜けてる。しかもほぼ客席に背を向けてるっていう演出が憎い。顔が見たい、顔が見たいっていう欲求を常に抱かせながら、けどどんな顔しているのかが手に取るようにわかる。

ナカゴーにしてはやりとりはきちんと成り立っている。細かい言葉尻の通じなさではない部分、一言の影響やら返しのオモシロさやらでも勝負するから、パターンの変化もうれしくなります。

それにしてもペットの掃除機ちゃん、意外すぎるほどかわいい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ナカゴー特別劇場 vol.4「エクレア、ヘディング」2011/4/30 17:30

特別公演三本立ての中から。今回の3本はタイトルがスイーツつながりらしい。

まずは一本めの「エクレア、ヘディング」。呑み友の女5人。酔っぱらって調子にのってイケフクロウを盗んできちゃう。返そうと相談していると池袋に一人で行こうとしている男の子と出会う。5人は親切に池袋まで連れていってあげようとしたのだが…。

ナカゴー得意の噛み合わない会話、炸裂。一見みんなで談笑しているように見える、けどそれぞれが言いたいことを言ってるだけ。ボケるだけでツッコミなし。それが楽しくてたまらない。女の子ってこういう会話するよね、って傍から思う感じがガンガンあふれてて、実際そうかもな、なんて思いながら観つつ、でも違う違う、こいつらおかしいよ、って戻りながら、あれ、やっぱりわかる、いやいや違うし、もっとちゃんとしろよ、ってすごくぐるぐる回る。

すごいくだらないけど、ウェルターズの飴、おいしい!って盛り上がる、そこで一人がうっかりナメながら飲み込んじゃう、あ、飲んじゃった、って言ったら、周りはもったいない!って言いながら自分もうっかり飲み込んじゃう。あるある、けどなんか同じにされたくない、みたいな。

バカだし、なんか自分はそこにいないはずと思いたいけど、すごくわかっちゃう感じがハマります。ストーリー展開は無理やりであるのが、この雰囲気の魅力。突如エクレア作りに入ったりとかね。

3本中一番劇団員が多いのも。高畑遊さんのふてぶてしさやあの声、好きなんですよね。まったくかわいくないごまくん(篠原正明)も気持ち悪くていい。

あと2本がひどく楽しみになりました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

黒色綺譚カナリア派番外公演「犬と花」花編 2011/4/28 20:30

立て続けに花編。こっちは東京デスロックの夏目慎也さん登場。かなり期待。

同じ脚本、のはず。あれ。ほんとに?

ってくらい不思議。こんな発想にたどり着くって。この物語においてはすごく必然に思えてしまう説得力があるから怖い。

精神科らしき病院が舞台。焼き鳥屋の吉雄と小四郎を演じる夏目さん。哲雄であり精神科医でもあり、さらに吉雄の父でもある男に板垣雄亮さん。一人が何人分もの役を演じ、さらに二人で一役を演じてみたり。そのあたりの境界の曖昧さが精神科的でもあり、戯曲からみえる風景でもあったりする。

そう、これがあるから演出ってすごいと思う。戯曲から浮かび上がる風景って、どんだけ幅があるんだってぎょっとする。台詞やらト書きやら、同じものを読んでもこれだけ違う世界が描ける。今回の二つの作品は表裏一体の双子でもあったし、何の血の繋がりもないけど世界に3人はいるというそっくりさんでもあるように思う。それくらい近くて遠い世界を見せてもらいました。

犬編を先に観たことをちょっと後悔も。どちらも面白かったんだけど、花編はストーリーとしての前情報がなかった時、どれだけハマれたか、ってのが気になって。把握しちゃったストーリーに対して、ここにあるものを乗せようとしてしまう自分が邪魔臭い。けれども逆だったらって想像すると、たぶんまったく意味わからず。あぁ、でも意味わからない感じの解釈がやっぱり楽しかった気がする。ちょっと縛られちゃったなぁ。

ぐったりしたんだけど、なんだかわからない興奮に包まれました。あぁぁ、どうにかこのお話を知らない状態に戻ってもう一回観たいよー。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

黒色綺譚カナリア派番外公演「犬と花」犬編 2011/4/28 18:30

番外公演、赤澤ムック作の戯曲を二人の演出家がそれぞれ違う役者を使って。DULL-COLORED POPの谷賢一さん率いる若手・犬チームと、鉄割アルバトロスケット牛嶋みさをさん率いる30代以上・花チーム。この顔合わせ、全く想像つかない。

焼き鳥屋と看板出しながら犬の肉を食べさせている二人の青年。それを知っている幼馴染の女は弟分に惚れられ、兄貴分に惚れている。その二人の青年が憧れる女。その弟はエロ写真を売ることで生計を立てているが、姉には秘密にしており。

まずは犬編、谷演出から。

ストーリーに忠実にアングラ風な雰囲気。昨年のProject文学をちょっと彷彿とさせるような。毒々しく激しくありながら、ちゃんとそこに生きる人たちの在りようを描いている。

愛した人の前では人は犬となり下がり、犬としてでもいいから愛した人に愛されたいと冀う。その熱量を強く感じてどきどきしました。

エロ写真を売る弟・小四郎役の井上みなみさんの一皮向けた達者な演技が瞠目。かわいらしい女の子のイメージが強かったけど、ぱっと場面を変え、流れを作る。

小四郎の姉を演じた牛水里美さんはこういう役を演じたら右に出るものなし。エロさ、はかなさ、小ズルい感じ、素晴らしい。

視覚的な衝撃と、あまりにもストレートな物語への寄り添い方が、谷さんらしくてよかったな。目を背けたいのに指の間から観ちゃう感じ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

パルコ・プロデュース「欲望という名の電車」2011/4/29 14:00

パルコ劇場久しぶりだなぁ。近頃かなり前から予約の必要な公演に全然行けてなくて残念です。芸能人系のでもいいものはいいから行きたいんだけど。

今回はやはり松尾スズキさん目当てで。テネシー・ウィリアムズの「欲望と言う名の電車」、観たことないのよね。それも楽しみ。

場末の汚いアパートで暮らす妹ステラ(鈴木砂羽)とスタンリー(池内博之)。そこへ行き場を失った姉ブランチ(秋山菜津子)が居候にやって来る。スタンリーの親友ミッチを誘惑するが、前の町を追われた理由をスタンリーが知ってしまい…。

どんな境遇に陥ってもプライド高く生きようとするブランチ。けれどもなんの後ろ楯もないプライドは相手を蔑むことでしか維持することができず、その態度は相手の反感を買う。嘘をつき媚を売るといった自分を守ろうとする行動が余計に憎しみを産み出すという悲しい循環の中で、ブランチはけなげに生きようとするんだけど。

そんなどうしようもないブランチを演じる秋山さんが可愛くてカッコ悪くて。したたかさ、図々しさ、あの声、あの微笑み、男なら迷わず騙されるわぁ。男だけじゃなくどうにか自分までも騙そうとする弱さまでがたまらない。

柄が悪く、品がなく、ブランチに徹底的に憎しみを向けるスタンリーを演じた池内さんもいい。何がいいってその身体つき。胸板厚く肩なんかはがっしりしてるのに、腹回りはなんとなく弛んでる感じが、いかにも呑んだくれて荒んだ生活を匂わせる。そこまで考えての身体作りがされてるとしたらすごいなー。30代の男の中途半端な雰囲気。そう感じさせる迫力。

松尾さんだからもっと笑えるのかなと思ったけど、意外にガッチリと。まぁ大人計画の俳優さんたちはお茶目でした。ちょこまかとかわいらしさを挟んでくるのはいい具合に力が抜けていい。

場面転換の映像がなんだかちょっと長くて、退屈な感じがしましたが。

3時間と長いのでちょっと疲れましたが、たまにはこんな風な有名戯曲をエンタメ演出でゆるっと観るのもいいなとは思えました。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2011年4月 | トップページ | 2011年6月 »