タダフラ演劇もすごい企画ですよね。一つの劇団員をまるごと別の演出家が預かっちゃうって。預けるほうも預かるほうも預かられるほうもひどく懐が深い。
ということで、横浜でのタダフラver.観劇。デスロックの全世界ツアーの中で、フランケンズの方々が観られるのはここだけ、しかも4ステって希少価値。
舞台上には鍋パーティーの残骸のようなセット。窓もなく壁も黒く、閉鎖された空間。転がっているたくさんの空き缶。そこへ現れる若者8人。さまざまな曲をかけ、歌い踊り狂う。
これもすごくネタバレするし、それによって想像力が邪魔されそう、と思う人は観る前には読まないで下さい。そして観た人はぜひ語り合いましょう
噂を聞いていた再生初演バージョンにかなり近いらしい。鍋パーティーを楽しんだ人たちが踊り狂い、最後に死ぬっていう。それを3回ひたすら繰り返す。私は観てはいません。
始まった瞬間の照明の暗さ、出演者たちのハイパーに高まったテンション。初演のエピソードを知らなくても、あぁ、この人たち死ぬ気だなと感じられるような、いびつな空気。怖くて怖くて、やめて、最後まで行かないで、ってすがりつきたくなるような。イライラするし怯えるし、観たくないし。顔もまともに見えなくくらいの薄暗い照明の中、命をすり減らしていく8人。狂気のテンション。
やっぱり破滅へと陥った若者たち。さんざん踊って楽しんで労わりあった後、クスリを回し飲み。やっぱりそこなんだよね、ゴール。観たくなかったって感じ。
って、そこからの再生。巻き戻しのような、それでいてパラレルワールドを描いたような。最初の立ち位置から、最初の曲が始まる。ちょこっと照明は明るくなる。
2回目。私はここが一番濃く、長く、ぱっつぱつに感じられました。破滅に向かってるのはわかってる。この若者たちは間違いなく死ぬ。けど、なんか回想シーンのようなちょっと穏やかな感触もあって。昔のドラマの、「愛という名のもとに」とか「天体観測」とかだったっけ?学生時代の仲間たちが大人になってまた一緒に過ごして、でも微妙に温度差を感じたりしてぎくしゃくするような、さわやかだけど重いみたいな空気を感じました。ドラマの総集編をすごいダイジェストでみせられてるような、感じ。
でもいやじゃないんです。なんでしょうね。一回目の流れで死んだ人たちの、過去の思い出っていうのが最初からわかって受け入れてるから、ここから立ち込める暗雲みたいな不安感がない。死ぬんだ、死ぬんだから、きれいな思い出を残すんだよ、この人たちは、みたいな。さっぱりきれいに死んでいったんだ。
それでもやっぱり薬を飲んでしまい、ちょびっと哀しい終末の後の3回目。照明はさらに明るくなり。俳優は疲れ切って、1・2回目に比べると動けてない部分も多くある。でもなぜかそれが1・2回目と切り離されて、全く関係ない、昔のバカばっかり集まって楽しくやってた頃にタイムスリップしたように思えました。
死に向かう狂騒でも踊り狂うかもしれないけど、たぶん息が切れて苦しくてもう踊りたくないってところまでは行かないような気がする。死ぬからには苦しい思いをしたまま死なないんじゃないかって。だからここまで追い詰められてもまだ踊るって言うのは、逆に明日から普通の社会生活に戻らなきゃいけないからじゃないかって。
そう思っちゃうと、中央の鍋セットは夏のキャンプ終わりのキャンプファイアーにしか思えない。明日からつまらない日常に戻らなきゃいけない、そのつまらなさ、けどまたいつかこの楽しさに戻ってこられる期待、そういうすごい前向きなはちゃめちゃさを感じられたから、3回目のリピートでは笑いっぱなしでした。そんなにバカやりたいなら、苦しかろうがなんだろうがもっとやれ!みたいな。
アフタートークで多田さんは、この二つのバージョンは同じ山を反対側から登ったようなもんだ、っておっしゃってました。観た直後はそうなのか?ってすごく思ったけど、反芻するとなるほど、って思える。やっぱり二つ観て「再/生」なのかも知れぬ。日々の些細な生きる喜びにすがりつく人たち、生きる喜びに絶望して一瞬にかける人たち。いろいろだ。
こんなにも「生」に真正面から向き合ってる潔さ。フランケンズの関係性があるからこそ生まれるんだろう深みとさっぱり感。
再演なんだろうけどたぶん全然違う。俳優のエネルギー、生きる力、立ち姿、あぁ、言葉じゃ言い切れない違い。もちろん初演のデスロック作品が負けてるとかいうわけじゃない。とにかくとにかく、力に満ち溢れてる。
4ステしかないからずいぶん売り切ればかりみたいだったけど、楽日に追加公演出ました!そりゃ観るでしょ。私も観たいし、たくさんの人に観て欲しい。
あと、アフタートークのマームとジプシー主宰の藤田貴大さんも意外なくらいおもしろかったです。20年安泰の時のノリの悪さを払拭して、たぶんほんとにこの作品を面白く観たんだろうな。もしかしたら嫉妬も含めて。多田さんと藤田さん、この二人のトークはすごい一足踏み外したおもしろさがあるように思いました。
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