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マームとジプシー「塩ふる世界。」2011/8/18 15:00

いつ売り出したんだか知らないくらいに前から売ってて、気がつかないうちに売り切れてた公演。増席しないかとずっと張ってたのに結局なし。かなりのひっさびさで当日券狙いました。結果的には受付時間ちょっと前に行っていればゲットできました。たぶんこれ以降はがんがんキャンセル待ちなんでしょうが。

マームとジプシーをこれまで観た感じとしては、こどものエピソードをこどもの目線で、っていう印象が強い。みせ方の技術はすごくおもしろいのに、自分の感情移入どころとか共感どころがどうも遠かった。大人の立場からこども時代を振り返る目線だったら全然OKなんだけど、リアルにそこを生きている人たちの物語だったから。

今回はこの夏の三部作のまとめと今後のスタートと言うことで波動砲ともいうべき一発らしい。確かに。それくらいの爆発力とこちらのダメージ。

夏のある日。お母さんが町の外れで海に飛び込み死んでしまった女の子。2学年で一クラスになるくらい子供の少ないその町ではみんなが幼馴染だったけど、その子はお母さんがいなくなったためにその町を出て行くことになっちゃって。

1時間20分ほどの上演時間が3時間くらいに感じられました。ずっとずっとこの場に座って眺めていた気分。これはいい意味で。いろんな場面で泣いたり笑ったり。ものすごい詰め込みようで、ここにいる子たちの何年もの時間の流れに寄り添った気分。

母親を亡くしたひなぎく(青柳いづみ)の淡々とした強さ。その母を失った同時間に好きな人への告白をして失敗した、はなこ(吉田聡子)。そんなはなこが思いを寄せるかえで(尾野島慎太朗)。幼馴染の同級生たちはそれぞれの立ち位置で。

小学校高学年であろうこの登場人物たち。それだけだと自分としては遠くて共に歩めない感じになっちゃうんだけど、こどもでありながら大人に足を突っ込んでおり、けどそれだけじゃなく言葉と身体の違和感を抱えている感じにもやもやしながら。こども目線だけじゃないところに攻めてきてもらってようやく受け止めどころをもらった感覚。

これまで以上に身体を疲れさせる演出。息切れして必死に走り回る子たち。そこで年齢不祥な存在感を受け取ります。生きている実感と言うのか。

かけまわり這い蹲り、転がり、泣く。そういう生々しさに、時に言葉が邪魔になるくらいの圧倒を感じました。なんだかわからない迫力。そこがこれまでのマームとジプシーにないところ。

マームとジプシーの感触って、なんとなくガラス細工のお人形が小中学生のころの透明なきらきらした思い出をみせるっていう印象だったんだけど、今回は生き物としての生命感を感じた気がしました。透明じゃなく、どろどろとした想いをこどもながらに抱えて、それでも生きようと頑張る姿がいとおしいかったです。

どろどろぎらぎらとみんなが生きている中で、母を亡くした当のひなぎくがすらりと端正に生きている様子が胸を打ちました。

ラストシーンの照明では、ここまで長い間寄り添ってきたこの子たちが、実は実在しない幻だったみたいな印象を受け、切なかったです。すべて私の妄想、のような。

いや、この進化はすばらしい。当日券だろうがなんだろうが、とにかく観た方がいい。

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