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2011年8月

CRUSH THE TYMKS「星の降らない夜明け前」2011/8/24 16:30

聞いたこともないし、読み方もよくわからないユニットだけどアゴラのオススメってことで。若い女の子のダンスユニットだそうです。ダンスって観方がわからないことも結構あるんだけど。

いやぁ、かわいい

題名のとおり、夜更かししちゃった後の朝方とか、早起きしちゃった夜明けとか、イメージがぐんぐん広がる。

猫や犬といった動物をイメージさせるような動き。

若い女の子なのに、顔の表情に頼らず身体全体の動きや照明や音楽で物語を作ってるのがどきどきする。たぶん笑ったり驚いたりにらんだりすればもっと簡単に感情が伝わるだろうに、そこに頼らずしっかり動くところがダンサーである所以であり、それを意識しているのかわからないけど3人がちゃんと徹底しているのがすごい。

私が好きだったのは特に手の表情。ひらひらさせたり突き出したり、二人が組み合わせたり、すごくすごく思いや風景が見えてきました。セクシーだったり寂しかったり、空に向かって羽ばたいていたり。こんなにも手って生き物なのね。

晴れてたり曇ってたり、楽しくなかったりおなかがすいてたり、つながっていく物語には私の中でできなかったけど、瞬間瞬間で立ち上がる空気はびっくりするくらい。

これはぜひともまた観たい!

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開幕ペナントレース「アントンとチェーホフと桜の園」2011/8/25 19:00

夕方から時間が余ったので上野公園で一休み。蓮の花のつぼみと葉を見つつ、その上空の遠くに流れる雲を眺める。なんだかこの世じゃないようなうっとり感。

そんな不忍池のほとりの水上音楽堂。近くを何度も通りながら入るのは初めて。

日没と同時の開場でした。なんかいい雰囲気。屋根はあるけど野外の自由さもあり、飲んだり食べたり、おしゃべりに興じたりしながら開演待ち。

したまち演劇祭in台東の一環の作品。この演劇祭、運営委員長に橋爪功さん。上野から浅草あたりの劇場やいろいろな会場で一ヶ月弱に渡り営まれてます。まだ2回目だそうですが。

さて、開幕ペナントレース。久しぶりに観ますが、ちょっと独特の展開を持っており、最初はうん?って思ったのに慣れてくるとハマってくる快感があるんです。

金髪のヅラをつけて、でもいつもどおりの雰囲気で登場。「説明できるなら観る必要ない」と言い切っているとおり、なんともいいようがない。必死な形相がかっこよくもありダサくもあり。

登場シーン、動きのスローさ、照明、口の開き方、それだけで感動しました。

中身はチェーホフだったっけってことを忘れるくらいのアレンジ。アントニオ猪木やチェ・ホンマンやキムチやら。石つぶてが飛びまくったり三角倒立や組体操に興じたり。

はい、まったく説明になりません。

とにかくバカだけどエネルギーがあり、笑えるけど必死で、力の限りを尽くしているのが好きなんです。

声が潰れながらもがんがん通しているのもいい。野外だからたぶん拡散しているんでしょうけど、それでも伝わる張り具合。

全身タイツは定番スタイルなんだけど、あんなに汗かいて動くのに身体が微妙に締まっていない感じとかも、人間くさくて暑苦しくて、いい。

俳優さん同士の距離が近くて、匂いたちそうなのもいい。

水上音楽堂だから水を使った演出がもっとあってもキレイだったかもと思いつつ、最後のきらきら輝く紙ふぶき&汗にうるん。

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ブラジル「さよなら また逢う日まで」 2011/8/14 18:00

ひっさびさの一日3本立てのラスト。

これはアゴラでの初演も観てます。紀伊国屋ホールみたいなでっかいところでの試み。キャストも大半が一緒で。

ありがたいことにこんな広いホールで最前列で鑑賞。テンション上がる!あの方々をこういう場所で近く観られるのはまた普段の小さい劇場とは違った意味に感じる。

ストーリー・設定はほぼ初演と変わらず。あんまり細かい部分覚えてないって思ってたけどそうでもなかった。

現金輸送車を襲って失敗した一団。仲間の一人・伊藤(西山聡)が犠牲に刑務所に送られ、それ以外のメンバーは逃れて今は、それぞれの生活を送っている。伊藤から連絡を受けて千葉(中川智明)がみんなを集めたが。

初演の感想はこちら。http://bit.ly/pRvhoL

すごい、最初の場面で伊藤と千葉が出会ってからのオープニング、ってとこで鳥肌。かっこいい!渋い!かっこいい!

初演の印象として、私は設定のうそ臭さが気になった印象だったんだけど、劇場がでかくなって舞台の空間が広がったらそれが全く気にならなくなり、フィクションとして受け取りやすくなった気がしました。嘘は嘘でよし!っていう寛容さって結構劇場の大きさと関係するのかも。

伊藤の軽さとこだわり、千葉のいろいろと考えてはいるけど微妙に宙ぶらりんな渋さ、ムショ仲間だった青木(諌山幸治)の浅はかさ、そうそう!と思いながら。この味がよかったんだと。

前回とメンバーが代わったところでは、クールな女・矢野(高山奈央子)のドスの利いた雰囲気、すごくよかったけど存在感がありすぎてあっさり殺されたのがちょっと納得いかず。かつて撃たれた女・宮下(奥田ワレタ)はすごく色っぽくて、影があって、足がきれいで。ホームでのコメディエンヌぶりを忘れるほど、しっかりマドンナたる風格。現金輸送車を運転する男(信國輝彦)はなんとなくなじんでるのに不安定で信頼できない感じがすごくはまっているように思いました。

全体として初演よりブラッシュアップされてて、あぁ、こんなふうに大きめの劇場にも適応してなじんでいくんだなぁと嬉しい感じ。お盆時期の3日間限定がもったいないくらい。

最前列でほんとありがたかった。全て堪能しました。

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マームとジプシー「塩ふる世界。」② 2011/8/18 19:30

まぁなんだか気になってしょうがなくって、予定がなかった夜をそのまま横浜で過ごすことに決めました。当日券2連発。狙っていた方すみません。

腑に落ちる感触じゃなかったから。おもしろいけど手放しで楽しめるジェットコースターじゃなくて、壁を触りながら真っ暗な中進むお化け屋敷的な楽しさだったから。

やはり展開がわかっている分、受け取る手触りも変わる。体感が3時間から2時間くらいへ。

まず、何度か繰り返される海でのシーン。冒頭が10年後や20年後、みんながこの町を去って、同窓会的に集まったシーンに見え、さっそくうるうる。

一度目にやや邪魔に思えた言葉が今回は効果的に聞こえました。なんていうか、身体の動きとの乖離で。本心として思っているわけではない、傷つかないためやら保身のために自分を言い聞かせるような台詞。だから言葉として発すれば発するほど嘘くさいし、必死すぎて切ない。

例えば、ひなぎく(青柳いづみ)が母親の自殺について理由を考える時。「わからないなぁ」といいながら実は全て了承済みなんじゃないか。自分たちは安全なこどもだ、と主張するはなこ(吉田聡子)。そう叫べば叫ぶほど、実際は自分がそこからもう出てしまっているって自覚してる。

すべての言葉が裏返し。と思うと幼馴染でぶつけ合うののしりさえもきゅんきゅん。

2度目だからか時空間もぽんぽん飛びました。30年後くらいのおばちゃんになってからの回想に感じられたり、小学生なんだけどすごい昭和初期雰囲気に感じたり、10年後の男に抱かれた頃を想像したり。どの空想でも通用する普遍的な強さが作品に備わっているように思えました。

そうなるとラストシーンは圧巻。自分がどの時代、どの世代の彼らと触れ合っているんだか混乱して。でも保護者のように同級生のように、次世代のこどものように、ずっと知っているっていう親密さを持って。

泣きそうで泣ききれないって言うちょっとしたすっきりしなさはあるんだけど、やっぱりこれはしばらく言葉を失うような力がある。3部作の真ん中、北海道公演の凱旋「待ってた食卓、」はどんな作品になっているのかすごく気になる。

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マームとジプシー「塩ふる世界。」2011/8/18 15:00

いつ売り出したんだか知らないくらいに前から売ってて、気がつかないうちに売り切れてた公演。増席しないかとずっと張ってたのに結局なし。かなりのひっさびさで当日券狙いました。結果的には受付時間ちょっと前に行っていればゲットできました。たぶんこれ以降はがんがんキャンセル待ちなんでしょうが。

マームとジプシーをこれまで観た感じとしては、こどものエピソードをこどもの目線で、っていう印象が強い。みせ方の技術はすごくおもしろいのに、自分の感情移入どころとか共感どころがどうも遠かった。大人の立場からこども時代を振り返る目線だったら全然OKなんだけど、リアルにそこを生きている人たちの物語だったから。

今回はこの夏の三部作のまとめと今後のスタートと言うことで波動砲ともいうべき一発らしい。確かに。それくらいの爆発力とこちらのダメージ。

夏のある日。お母さんが町の外れで海に飛び込み死んでしまった女の子。2学年で一クラスになるくらい子供の少ないその町ではみんなが幼馴染だったけど、その子はお母さんがいなくなったためにその町を出て行くことになっちゃって。

1時間20分ほどの上演時間が3時間くらいに感じられました。ずっとずっとこの場に座って眺めていた気分。これはいい意味で。いろんな場面で泣いたり笑ったり。ものすごい詰め込みようで、ここにいる子たちの何年もの時間の流れに寄り添った気分。

母親を亡くしたひなぎく(青柳いづみ)の淡々とした強さ。その母を失った同時間に好きな人への告白をして失敗した、はなこ(吉田聡子)。そんなはなこが思いを寄せるかえで(尾野島慎太朗)。幼馴染の同級生たちはそれぞれの立ち位置で。

小学校高学年であろうこの登場人物たち。それだけだと自分としては遠くて共に歩めない感じになっちゃうんだけど、こどもでありながら大人に足を突っ込んでおり、けどそれだけじゃなく言葉と身体の違和感を抱えている感じにもやもやしながら。こども目線だけじゃないところに攻めてきてもらってようやく受け止めどころをもらった感覚。

これまで以上に身体を疲れさせる演出。息切れして必死に走り回る子たち。そこで年齢不祥な存在感を受け取ります。生きている実感と言うのか。

かけまわり這い蹲り、転がり、泣く。そういう生々しさに、時に言葉が邪魔になるくらいの圧倒を感じました。なんだかわからない迫力。そこがこれまでのマームとジプシーにないところ。

マームとジプシーの感触って、なんとなくガラス細工のお人形が小中学生のころの透明なきらきらした思い出をみせるっていう印象だったんだけど、今回は生き物としての生命感を感じた気がしました。透明じゃなく、どろどろとした想いをこどもながらに抱えて、それでも生きようと頑張る姿がいとおしいかったです。

どろどろぎらぎらとみんなが生きている中で、母を亡くした当のひなぎくがすらりと端正に生きている様子が胸を打ちました。

ラストシーンの照明では、ここまで長い間寄り添ってきたこの子たちが、実は実在しない幻だったみたいな印象を受け、切なかったです。すべて私の妄想、のような。

いや、この進化はすばらしい。当日券だろうがなんだろうが、とにかく観た方がいい。

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ヨシロォの夏は夢叶え冒険団「ドリーム オン ドリーム」2011/8/9 17:30&20:00

年に2回ほどのお楽しみ。MCRの福井喜朗さん率いる冒険団。一日限り、3ステのみの本公演をずっと続けてるって稀有だよなぁ。そのスタンスがレア度に思えてつい何をさておいてもかけつけようとしちゃう。

今回はついに初めてのリピート。うれしいな。アドリブもりだくさんっぽさにどうにか2度観してみたかったんです。

今回はちょっとハードボイルド風味。東西の賭け師が名誉をかけて戦う場、東西戦。裏でいろいろ格策するのは夫を亡くしてリベンジしようとする極道の妻(異儀田夏葉)、家族を守ろうとする賭け師(三瓶大介)、すべてを利用して設けようとする裏世界の悪者(関村俊介)、かつての大物賭け師(おがわじゅんや)が未来を託した若者(小野紀亮)、などなどなど。

ってシリアスめに書いてみるとずいぶんかっこいいけど、お味はどこまでもくだらない。

くだらないけど、くだらないのにちゃんと一生懸命どつきどつかれる。途中挟まれる、近藤美月さん振り付けのダンスとかも一生懸命。だけどおかしいのね。かわいくて愛しくて、好き。

かわいいと言えば、途中で脱ぐ小野さん、妙な半袖の日焼け跡がかなりダサくて、ウケた。

MCRのおがわじゅんやさんが出ると老執事のような貫禄があって(たとえ噛みまくっても)なんか落ち着く。冒険団常連の三瓶大介さんのかわいらしさはなんなのでしょうか?今回ストーリー的にも愛する妹を守ろうとする役で、その愛の控えめさがかっこよくみえちゃった。どっしりした悪役を演じた関村さんは、この人容赦なくどSだなってわくわくする。

冒険団の女優さんが虐げられるのは定石だけど、今回は女優お二人、伊達香苗さんと異儀田夏葉さんが取っ組み合いをし、二人で水を噴き合うのが最高!女同士の醜い争いを肉弾戦にしちゃっててリアルに怖いし間抜け。もっとやれと思ってしまった

2回観て何か違うかなって思ったら、今回のストーリーのせいかうっかりちょっと感動しそうになっちゃいました。MCRっぽい優しさというのか、妹を思うお兄ちゃんとか、引退しようとするベテランの引き止め方とか、弟子を送り出す師匠とか、照れながらストレートなところ。いかんいかん、笑い飛ばさねば。感動は間違い。

最終回、いつものMCR主宰の乱入があるかと期待したけど、別公演の稽古なのか出てこず、かなり残念。ま、その代わり関村さんとか面白かったけど。帰りに駅に向かって歩いていたら主宰の櫻井さんが劇場に向かってて、すごい微妙に間に合わなかったんだなって思いました

次回は12月だそうですが、いつか一日制覇してみたい。

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東京デスロック「再/生」京都・デスロックver. 2011/8/5 19:00

今回のデスロックのツアーは本当に行くつもりじゃなかったのに、横浜ver.での雰囲気から、この作品の広がり様はハンパないと感じ、ついつい追いかけてしまいました。夏の京都は暑すぎるから行くもんじゃないと言われても。

無理やり行ったもんだから初日しか日程が合わず、KAIKA劇団 会華*開可ver.は観られず。すごく残念。

だけど、デスロックの京都デビューを拝見しました。

京都、10年ぶりくらいに行きましたけど意外と素敵な街でした。よそもんにはもしかしたら冷たいのかもしれないけど、あんまり感じないままおいしいものをいただき、楽しく歩きました。

夜、京都の友人と共に観劇。下のコンビニは知ってたけど、この上が小屋だったとは、と京都在住の友人も驚くことしきり。KAIKAって目立たないところにある。地元の人がびっくりするってなんか楽しい。

横浜ではずいぶん私も自分の妄想に走りましたが、なんかこの日はこの場にいることの幸せを感じました。ちょっと俯瞰っていうのか。作品に物語は乗っかるんだけど、乗っかってる物語を演じる俳優は現実に生きている人で、横浜でも同じようにやっていて、だから自分がいくら妄想してもそれは妄想にすぎないんだけど、なんだか舞台に乗っているこれ全体が客側の妄想かもしれないなんて。この客席にいるみんなのおかしな空想がこの舞台を作り上げているような。

空間が違うってのはやっぱりいろいろとおもしろかったです。天井が低い分、俳優たちの上への動きがすごく飢えているように感じたり、後ろの壁が黒かったから、そこに映る照明が生への道筋に感じたり。マイナスだったのはサイドが壁じゃなかったことかな。壁にぶつかっていく俳優がおもしろかったのに。

でもなにより幸せだったのは、私はいつもどおりなんかよくわからないのにすごく楽しく最後涙目になっていたところに、一緒に観た友人が終わってしばらくしてから「おもしろかったよ」とぽつりと小さくつぶやいたことでした。どっと泣いてしまいました。

普段一人で芝居を観ていると共有したくてもなかなかできなかったりして、でもそれも含めて一人で噛みしめていたりもするけど、遠い地に行って、誰かと一緒に観て、想いを共有して、もしくはまったく違う想いを持って、っていうのがすごく幸せに感じました。デスロックに関してはその友人は神戸の「3人いる」以来でしたが、「なんか深みに行ったねぇ」っていう感想にもどきどきしました。

終わった後、上のカフェでアフタートーク。これもおもしろかったです。自分の妄想が人に通じることは少ないなって思ってたけど、今回のゲストでいらっしゃっていたエイチエムピー・シアターカンパニーの笠井友仁さんと結構重なっていて。親近感♪

行ってよかった。KAIKAも素敵。京都も素敵。そこに乗り込む東京デスロックはもちろん素敵。終電で帰ってくるのがひどく寂しかったです。京都の人にも伝えたかったし、友人とももっと作品について語り合いたかったから。くうぅ。

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