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2011年9月

ミナモザ「ホットパーティクル」2011/9/27 19:30

佐藤みゆきさんが作演出の瀬戸山美咲さん自身の役を演じる、しかも原発に行ってきた、みたいなちょっとセンセーショナルな煽り文句。瀬戸山さんが何を狙って震災地、原発を取り上げるのか。今現在、そういうテーマが観たいわけではないんだけれども、だからこそ、じゃ、どう扱うのかを観に行く。

震災後、特にそれに反応したわけじゃないけど、自分の社会派作品の演劇を作るユニットでは震災や原発を扱わないわけにいかないと思い、原発を見に行こうと計画する「私」。実際にはたどり着けず、けれどその経験で自分は変わったと自覚して。ただ、何がどう変わったのか、他の人との関係性にも悩み、今回の作品作りは難航する。「私」はどこにたどりつくのか。

なんとなくのイメージで、勝手に福島の被災状況とかと重ねた作品になるのかと思っていました。けど全然違った。この状況に接した瀬戸山美咲さん自身の物語。

フィクションはないらしい。ドキュメンタリーっぽい。どこまでが狙いかはよくわからないけど、作り手にとって嘘がないことと、ドキュメンタリーであること・フィクションではないってことはつながらない。観ていてそう思いました。どこまで正直でも観客にとっては物語。ドキュメンタリーの体裁をとっても、やはり虚構、見世物。でもそのからくりみたいなものが面白く思えました。

最初はね、本当に瀬戸山さんの周りで起きた事実がそのままに描かれていてそのままに受け止めてた感じ。だから震災に対してのスタンスみたいな感じに受け取れたけど、徐々に「私」対「世界」の主観的な作品になっていきました。

今、この時期に作品を作ること、そこで他の団体は震災や原発を扱わないことを訴えるんだけど、実はこの作品でもそれを扱っているわけではなく、それに出会った「私」、しかも実際その場にいたわけではなく、遠くから眺める立場の「私」が描かれている。しょっぱいなと思いつつも、東京で暮らす自分としては結構共感できてしまったりする。

元カレのじゅんちゃん(平山寛人)が、震災後急に付き合ってたわけでもない昔馴染みの女性と結婚してしまう。でもやめろっていってるのに「私(佐藤みゆき)」への連絡はし続けるから、奥さんにバレてじゅんちゃんは家出してホームレスに。ある日じゅんちゃんは街中で喧嘩して、怪我して血まみれになる。その話を電話で聞いていた私は笑ってしまうが、実際血まみれの姿で会った奥さんはドン引きしていた、とじゅんちゃんは言う。けれどそんな奥さんとじゅんちゃんは仲直りしておうちへ戻ることとなる。

そんなエピソードが象徴的に思えました。実際目にせず聞いただけの相手の怪我を笑えてしまう感覚、目の前にけが人が現れたときの引き様。被災地から離れている自分の感覚を突かれたようで。

ある一定期間再現し続ける演劇で、このようなドキュメンタリー形式の作品を作ることは面白かったし展開にすごい興味を覚えました。ありえないわくわく感。最後までその集中力がとぎれず楽しめました。けれど、大規模な社会的事象を扱っているかと思ったら収束が私小説的で、最初の構えがそうではなかった分オチどころはそこか、という感覚もありました。だからか、後半作品作りに悩む辺りからは少し長く感じました。

『「私」が接した震災・原発』っていう部分と『震災・原発から影響された「私」』っていう部分のバランスの取り方が、私の感覚としては前者寄りかと思っていたら想像以上に後者にウエイトがあったという感じです。

そんな「私」の物語だけに、「私」を演じた佐藤みゆきさんの存在感は素晴らしく、どの表情や立ち姿をとっても、ダメな「私」、きりっとした「私」、立ち直る「私」、疲れた「私」、目を離せませんでした。悩み揺れる、でも「私」である姿を毅然と示しているのが美しい。

ドラマターグと謳われた中田顕史郎さん。現実としてこの作品のドラマターグではあるんだろうけど、私の観ていた感覚としては、実は瀬戸山さんの頭の中で「顕史郎さん」というキャラクターで「顕史郎さん」らしくドラマターグの役割らしい台詞をしゃべる人を、実在の中田顕史郎さんという俳優さんに投影して作ったのではないかと思えるような存在。実在の人物なのに瀬戸山さんの脳内キャラに見えてしまう。そしてそれがすごくおもしろい。

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good morning N°5 Party Live Show 4「愛狂しき塊、新しいうた」 2011/9/24 16:30

拙者ムニエルの澤田育子さんとカムカムミニキーナの藤田記子さんのユニット。これも私大好きなんです。小さくて、座っているのがつらいような劇場でずっとずっとやっていて欲しいユニットです。

だって、公演中の飲み食い、アルコールありでどうぞ、トイレもいつでも、携帯もどうぞ、芝居がわからなきゃ止めて質問もどうぞ。ダメなのは腕時計を見ること、見させないために実際の時間を指した時計を舞台上に置いちゃうくらいのサービス精神。開場時からの澤田さんのパフォーマンスもかっこよい。

38歳独身ダメ女としながら、澤田育子さんのかっこよさったらないのです。好きなことを好きなだけやり、自分も満足しながら私たち観客への気配りもハンパない。

藤田さんの堂々たる肉体もツッコミを許さない潔さ。作演出の澤田さんに応えすぎるぐらい応える。まさかのオープニングのふんどし姿は、半歩間違えたら泣いちゃうな。たぶん間違えないけど。女と生まれたら見習いたい凄絶な姿でした。

今回はお二人以外の客演に結構任せている感じもあり、お二人だけの濃さじゃない別な味覚も味わえました。その分ちょっと全体の流れ的な部分が甘くなった気もしますが。

もっともっと澤田&藤田のどうしようもない姿を拝みたかった感じはありました。でもその分、って言っちゃなんですが、米米クラブのMINAKOさんのはっちゃけはかっこよし。

公演終了後に公開ダメ出し(と言う名の公開飲み会)も毎度あるんですが、これはまだ行ったことないんですよね。一人で行くにはちょっと気が引けて。通常公演は舞台上から話しかけられるのを待ってるくらいに近くからガン見するのに,変なところでヒヨる。いつかぜひとも行ってみたい。

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Charade vol.3 おしゃれ紳士×梅棒合同公演「オシャレ紳士と梅棒のラブ・パレード」 2011/9/24 19:00

はい、2日連続で。

おしゃれ紳士・梅棒は日大藝術学科の先輩後輩。さまざまなパフォーマンスを駆使するおしゃれ紳士とダンス中心の梅棒。どちらも私は単独での公演を観たことがないです。だけどどちらも観たくなります。この公演観ちゃうと。

私は小劇場好きなので、ゲキバカやパラドックス定数から俳優さん目当てで入っていったクチ。けどこの公演の客層は全く読めない。ものすごいマニアが多い気がする。全てのキャストを知って、しっかり掛け声をかけることが出来るような。アイドルグループのファンイベントに来たような気分。

でもやっぱりこのメンズはかっこいいんですよ。身体も動きも美しくて。

イメージとしては似ているのは、ゲキバカの3月公演「ローヤの休日」の男囚バージョンのオープニングのパフォーマンス。あれも大好きでした。

2度目はフォーメーションを観るために引きの席にしました。最前列で今人さんのシャウトを受け止めたり、西川さんとハイタッチしたりもしたいんだけど。けど、全体の美しさも捨てがたいので。

遠くから観ても個々の身体は美しく、全体の統率も素晴らしく、客席からの悲鳴も納得。「キモイ~」っていう叫びさえも愛情なんだよね。

引いてみると俳優さんっぽい人とダンサーっぽい人の動きの違いとかも面白かったです。声の出し方とかもそうだし、身体のしなやかさとかも。同じ動きをしていてもポイントの違いが感じられて。

二度観ても卓球のシーンは最高!あのアイディアと見た目の美しさ。

本当に時間が許すなら私はこの公演何度でも足を運びます。大好きなんです。みんなに観て欲しいと思いつつ、すごく矛盾ではあるけど、これ以上大きなところへ行かずに近くで観ていたいです。

ただ、やっぱり女子萌えではある気がするけど。デートで行くよりは女友達と行きたい。

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Charade vol.3 おしゃれ紳士×梅棒合同公演「オシャレ紳士と梅棒のラブ・パレード」 2011/9/23 19:00

去年4月の前回公演、マチネで観てすっかりメロメロになっちゃって、どうしてもまた観たくって、でも当日券情報が全くなく、チラシに連絡先もなく、仕方ないからマチネ終わりからソワレの受付開始までその場で待って、挙句当日券なしと判明、っていうかなり哀しい結果に終わった惚れまくりの団体。昨年末の情報解禁からずっとずっと待ってました!だから絶対初日と思って予約したら、台風で現着できず。。。なんて引き裂かれる運命なのか。ようやく開演3日目にして逢えます。ドキドキです。

早めに席取りしようと思って開場5分前くらいに行ったんだけど、甘い甘い。すでに整理番号40番台!すごい。女子3~4人連れがものすごい数。

ま、とりあえず端の方ではあるけど最前列ゲット。

まわりの女子の追っかけぶりに圧倒されつつ開演。

男18人のダンス&パフォーマンス。

J-POPのやや懐メロヒットソングやK-POPなんかに合わせて、シチュエーションや歌詞を生かしたマイムや芝居。構成・演出の西川康太郎さんのエンタメ精神に感銘するほど素晴らしい出来なんです。

もちろん女子的に男子のキレイな身体を鑑賞するっていう意味合いもあり。眼福。観察しつつ同じキレイでもダンス系の身体と俳優の身体との違いを考えたり、筋肉の付き具合を比較したり、ね。

ダンスだけの作品よりもだんぜんとっつきやすく、お気楽に楽しめるのは、ものすごくわかりやすいストーリーが見えるから。身体から出る欲求を表現行動に移しているのではなく、客ありきな楽しませ方を考えて計算して、どう出ることがここにある身体を使って一番効果的に楽しんでもらうことができるか、っていうサービス精神がすごい。それでいて、メンバーがみんなちゃんと楽しんでいる雰囲気がある。

すごく面白かったのが、卓球対決のシーン。一対一でのシーンから、球の動きを俳優たちで分担して見せていくそのアイディアがね、思わず拍手したくなるくらい斬新。腕、指、それから人数を駆使した球の弾道の見せ方。

匠の技、とうならされた石黒圭一郎さんの一人芝居。片腕をコートに通しただけでコートを着た男と、彼に沿う女の二人にすんなり見えてしまう。左右の腕が別人格を演じるって。。。すごく自然にそれが見える、そして面白い!

パラドックス定数での渋い芝居の印象が強かった井内勇希さん。ややガリガリではありましたけど筋肉が美しくて、しかもダンスもできるんだぁ。意外。

全体にキメキメすぎず、落としどころも少しかわしつつ、かっこいいけどかわいくて愛しいっていうのが女子心をくすぐってますね。

今回は1回で後悔しないように2回予約してます!。次も鼻血覚悟で。

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MCR「女がつらいよ」2011/9/9 19:30

MCRが王子小劇場とはちょっと意外な組み合わせ。今回は女優が多めでしかもほとんど客演。なんせ「あずきちゃん」ネタとは。ドリチョコとのコラボ感も楽しみ。

余命を宣告されるくらいの重い病のあずきちゃん(小椋あずき)とその彼氏で怪しい仕事をしているヨウヘイくん(奥田洋平)。超ラブラブな二人だけどお互いを思うあまり秘密なこともある。仕事仲間や家族に支えられて二人はどうなるのか。

すっごくすっごくキュートでラブリーな、あずきちゃんLOVEが貫かれている素敵なお話。作演出の櫻井智也さんの観察眼と人間愛に改めて瞠目。

いつもどおりのキャラ押しのやりとりが続き、笑いに笑います。珠玉の台詞の数々があって、今回台本売ってたら絶対買ったのに、ってほど。

ストーリーに奇抜さがない分、きちんと人間が描かれている。一見特殊なちょっと飛んじゃっている人ばっかりなんだけど、気持ちの流れとしてはすごく人間味にあふれるってとこがMCRの素敵なところ。人物像とその関係性。

前回公演に引き続きの登場の奥田さん扮するヨウヘイくん。路上だろうがなんだろうがあずきちゃんLOVEの姿勢を崩さない。坊主頭の男前っていうだけで妙なイッちゃってる感があるけど、それだけじゃなくあずきちゃんと向き合ってる時の表情がなんとも優しく、あずきちゃんに嫉妬を覚えるあずきちゃんはあずきちゃんで、ドリチョコの時と変わらず(マコトくんとは別れちゃったみたいだけど)純粋で一途で猪突猛進で、必死さが全部健気さ愛くるしさに変換されて見える。

医者と看護師のコンドウ(近藤美月)とオノ(小野紀亮)の掛け合いはお笑いパートだけど、ちゃんとストーリーにつながってて。コンドウの言動はかなりのすっ飛びようで共感のしようがないレベルに作り上げられてるのに、なのにラストにはタイトルの「女がつらいよ」に関わってくるってすごい。

あずきちゃんの家族や同僚たちのうざったい感じと愛もたまらない。

私の個人的ベストポイント。あずきちゃんがヨウヘイくんに抱きついて本当のことを話す場面。それまで大笑いし続けたとこに。。。あずきちゃんのキャラに合わないくらい静かな告白に、ごくごく自然に応えるヨウヘイくん。どわっと涙が出そうになったところにありがたいタイミングでの暗転。ここで暗転ってさぁ。ハンカチ握り締めちゃった。狙った泣きポイントだったら腹立たしいくらい醒めるところなのに、まんまとハメられました。こんなに思惑通りに泣けちゃうって悔しい。

そして、ラスト近くの、勤めてた組織を辞めてきたヨウヘイくんとあずきちゃんが向き合う場面。二人の姿が浮かび上がり、私は自分の観ている席から飛んで、違う位置から二人を見つめていました。世界がとんだ。劇場には二人と私しかいなくなった。

私の普段の感覚として、おもしろいと思ったら何度でも観たいと思うのに、なぜか今回は二度と繰り返しちゃいけないような感覚。たぶんいろんな登場人物の想いがすごくリアルで生々しいから、その体感を二度たどっちゃ嘘になっちゃうから。今観てきたその世界の余韻や後味をどこまでもどこまでも引きずっていきたい。劇場から出たくない。今、誰もいない劇場であのセットを見つめさせてくれるなら私は客席に座りたい。あずきちゃんとヨウヘイくんの世界をそこに妄想して覗いていたい。

やっぱり櫻井さんの世界ってすごいなー。根源的に響く。

ほんと、もう一回観たいけど観たくない、ってジレンマを感じます。そうしていつまでも引きずるのも快感。

そんな気持ちで観ているからかもしれないけど、カーテンコールで出てきた櫻井さんがあずきさんに笑いかけているのがもうステキすぎて、恥ずかしくて正視できませんでした。思わず顔伏せちゃった。

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