MCR「女がつらいよ」2011/9/9 19:30
MCRが王子小劇場とはちょっと意外な組み合わせ。今回は女優が多めでしかもほとんど客演。なんせ「あずきちゃん」ネタとは。ドリチョコとのコラボ感も楽しみ。
余命を宣告されるくらいの重い病のあずきちゃん(小椋あずき)とその彼氏で怪しい仕事をしているヨウヘイくん(奥田洋平)。超ラブラブな二人だけどお互いを思うあまり秘密なこともある。仕事仲間や家族に支えられて二人はどうなるのか。
すっごくすっごくキュートでラブリーな、あずきちゃんLOVEが貫かれている素敵なお話。作演出の櫻井智也さんの観察眼と人間愛に改めて瞠目。
いつもどおりのキャラ押しのやりとりが続き、笑いに笑います。珠玉の台詞の数々があって、今回台本売ってたら絶対買ったのに、ってほど。
ストーリーに奇抜さがない分、きちんと人間が描かれている。一見特殊なちょっと飛んじゃっている人ばっかりなんだけど、気持ちの流れとしてはすごく人間味にあふれるってとこがMCRの素敵なところ。人物像とその関係性。
前回公演に引き続きの登場の奥田さん扮するヨウヘイくん。路上だろうがなんだろうがあずきちゃんLOVEの姿勢を崩さない。坊主頭の男前っていうだけで妙なイッちゃってる感があるけど、それだけじゃなくあずきちゃんと向き合ってる時の表情がなんとも優しく、あずきちゃんに嫉妬を覚えるあずきちゃんはあずきちゃんで、ドリチョコの時と変わらず(マコトくんとは別れちゃったみたいだけど)純粋で一途で猪突猛進で、必死さが全部健気さ愛くるしさに変換されて見える。
医者と看護師のコンドウ(近藤美月)とオノ(小野紀亮)の掛け合いはお笑いパートだけど、ちゃんとストーリーにつながってて。コンドウの言動はかなりのすっ飛びようで共感のしようがないレベルに作り上げられてるのに、なのにラストにはタイトルの「女がつらいよ」に関わってくるってすごい。
あずきちゃんの家族や同僚たちのうざったい感じと愛もたまらない。
私の個人的ベストポイント。あずきちゃんがヨウヘイくんに抱きついて本当のことを話す場面。それまで大笑いし続けたとこに。。。あずきちゃんのキャラに合わないくらい静かな告白に、ごくごく自然に応えるヨウヘイくん。どわっと涙が出そうになったところにありがたいタイミングでの暗転。ここで暗転ってさぁ。ハンカチ握り締めちゃった。狙った泣きポイントだったら腹立たしいくらい醒めるところなのに、まんまとハメられました。こんなに思惑通りに泣けちゃうって悔しい。
そして、ラスト近くの、勤めてた組織を辞めてきたヨウヘイくんとあずきちゃんが向き合う場面。二人の姿が浮かび上がり、私は自分の観ている席から飛んで、違う位置から二人を見つめていました。世界がとんだ。劇場には二人と私しかいなくなった。
私の普段の感覚として、おもしろいと思ったら何度でも観たいと思うのに、なぜか今回は二度と繰り返しちゃいけないような感覚。たぶんいろんな登場人物の想いがすごくリアルで生々しいから、その体感を二度たどっちゃ嘘になっちゃうから。今観てきたその世界の余韻や後味をどこまでもどこまでも引きずっていきたい。劇場から出たくない。今、誰もいない劇場であのセットを見つめさせてくれるなら私は客席に座りたい。あずきちゃんとヨウヘイくんの世界をそこに妄想して覗いていたい。
やっぱり櫻井さんの世界ってすごいなー。根源的に響く。
ほんと、もう一回観たいけど観たくない、ってジレンマを感じます。そうしていつまでも引きずるのも快感。
そんな気持ちで観ているからかもしれないけど、カーテンコールで出てきた櫻井さんがあずきさんに笑いかけているのがもうステキすぎて、恥ずかしくて正視できませんでした。思わず顔伏せちゃった。
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