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冨士山アネット/Manos.(マノス) 「HIKIKOMORI」 2012/2/18 13:00

ドイツ文化センターのリーディングシリーズ、今回は冨士山アネットの長谷川寧演出、板倉チヒロ一人芝居。これを観るために先月は冨士山アネット「八」のお二人のアフタートークにも行きました。元引きこもりだったという板倉さん、ドイツ戯曲がどう作用するのか。

席数がかなり少ないと聞き、あの広いホールをどう使うのかと思ったら、客席は通常の舞台上でした。普段の客席側に会議室の折り畳みテーブルを並べたのが舞台。雑然とした部屋。所々机の隙間があり、部屋の外界へ通じている。

引きこもりのH.の部屋での様子や妄想、母との関わり、ネットでのコミュニケーションを描いた戯曲は、ビックリするほど日本のそれと共通するイメージ。悶々としていたり妙にテンション高かったり、イライラしたりぐだぐだしたり。先日の板倉さんの、冨士山アネットでのトークの引きこもりネタを彷彿とさせるような。

なんていうかパズルのピースがすべてぴったりはまったかのような、パーフェクトな組み合わせだと思いました。引きこもり経験のある板倉さん、その板倉さんを部屋という小さな宇宙の中で解放しおもちゃのように操る長谷川さんの演出、ドイツなんて遠くで書かれたと思えないほどとすんなり共感できてしまう戯曲、客に面と向かわず台本越しに語るリーディングという形態。これ以外にあり得ない出会いに立ち会えた気がしました。

板倉さんの追っかけを自称する私ですが、今回のお姿は新しかったなぁ。引きこもりトークを聞いたせいもあるかもしれませんが、途中、どこまでが板倉さんで、どこからがH.なのか、すごく溶け合って見えて。H.の妄想の中のヒーローとなり、妄想の中では部屋を飛び出て自由に飛び回り、客席にまで、まさにリアルにふれあう距離まで降りてきて、いろいろな境目がなくなっちゃってすごーく心地いいカオスの中に沈められた感じ。板倉さんがそこにいるのか、H.がいるのか、妄想のキャラがいるのか。板倉さんは板倉さんである前にH.であって、H.が正体であって実は板倉さんなんて人はいないのかもしれない。赤毛の女の子を好きなのはH.ではなく板倉さん?お母さんに責められてるのは誰?トイレに行ってるのは誰?

まぁそんな変な感覚に陥らせてくれた演出、おもしろかった。しゃべるのは板倉さんだけでしたが、回りの女たちの姿として長谷川さんが登場します。身体がそこにあるというのはやはりものすごい強みで、単なる一人リーディングにはさせない厚みを感じました。一人の空間である部屋の隅々まで板倉さんの存在が支配しているんだけれども、そこに別の身体があることで一人っていう密度が強調されてました。

ほとんどリーディングとは言えないくらいの動き回りようでしたが、あくまでもその縛りは存在しており、どんなに動いても台本は離さない。台本を見つめ、それを拠り所にしている様子は一人の空間を自分だけで埋めながらも、それだけでは立っていられない心細さのようなものが感じられ、すごく効果的。台本に向かって力一杯投げつける言葉の数々が、直接発されるよりも強烈に客席に届き、相手を欲する切実さを感じました。

ただ、リーディングのわりになぜか言葉やその内容が印象に残ってません。ビジュアルや、言葉を話してる表情、音、照明、声色などは鮮明に焼きついているのだけれど。長谷川さんがダンス寄りの人だからかな?

これは2ステ限定はもったいなさ過ぎ。ぜひともこのまま、再演熱烈希望!

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