「日本の問題 Ver.311」2012/3/8 14:46
昨年の「日本の問題」小劇場版・学生版に引き続いての企画。アロッタファジャイナの松枝さんプロデュース。今回の参加劇団はけったマシーン、思出横丁、四次元ボックス、荒川チョモランマの4つ。
「日本の問題」は小劇場版のミナモザ・アロッタファジャイナ・ろりえ・JACROWの方のみ観劇。学生版は観ていません。
今回は311Ver.と謳ったせいか、地震・津波に焦点が絞られている印象。
けったマシーンは昨年演じられた脚本を使っての作品。ひょっとこ乱舞広田淳一さんの「まだ、わかんないの」とミナモザ瀬戸山美咲さんの「指」。広田さんの作品は昨日のひょっとこのアフタートークでも言っていましたが結構ひょっとこの今回の作品のベースになっている感じ。リーディング前提で書かれた作品のようで、ここでもその態を崩さずに。「指」は昨年の小劇場版で観た時は、私はあまりにも直截で私には受け入れられないところがあったけれど、今回は時間も経ったせいか二度目だからか、意外にすんなり入ってきました。ただ、演出だけに絞っているのに新鮮味はあまりないようにも感じました。
思出横丁はあえて演劇にせず、走れメロスに載せた被災地に関する一人語り。これはずるいと思いました。演劇にしない/できないならばこの企画にもってくるのはどうかな、と。
四次元ボックスはやや地震からは離れた作品でした。夢の中に繰り返し出てくる自分の親兄弟・親友にまつわるエピソード。
荒川チョモランマは被災地の未来について、小学生が自分の将来の夢に載せて語るお話。私にはこれが一番今現在、そしてこれからの被災地についてメッセージを持って作っている作品に思えました。
実は前説にて、ノマドプロデューサーの廣瀬直紀さんが「(あくまで個人的意見だが)今この地震が起きている時に演劇には意味がない」という爆弾発言をしてから作品が始まります。観る側として私は、演劇を観ることに意味があるから劇場に足を運んでいるわけではなく、意味があるかないかを議論したい気持ちはないので、何を言われているんだか結構戸惑いました。震災後これまで観た作品の前説では、「今演劇をやっていいのかどうかはわからない。けれども自分はやりたいし、自分がやれることはこれしかない」というスタンスが多かった気がします。それでいいと思っていました。私も私の日常として観劇があるってことをやめたくなかったから観続けています。作り手に意味がないと言われると、私も帰ってニュースを見たり新聞を読んだり、別のことをしなきゃいけないのか、と思いましたけど、でもやっぱり演劇がそこにあるから観に行くし、お客さんがいる限り上演するっていう作り手がいるならそこにいたいと思います。作品自体とかそれを上演するその場に意味があるとかないとか、演劇が世間を変えるとか、そういういことではなく、日々の営みの中の一つとして、飯食って働いて眠ってっていう流れの中で観劇を続けていたいなと思いました。
まぁそう考えると「日本の問題」っていうくくりが逆に小さく見えてしまったりもして。毎日結局同じようなことを繰り返していて、震災は大きな出来事ではあるけれどもそれだけをピックアップして作品にするっていうことには、ムリがあるっていうか。
今回集まった劇団が震災というテーマに捕われて、自分としての問題意識とややかけ離れてしまった感じがありました。いかにも学校のレポートを書く感じで、興味のあるなしじゃなく、調べてそつなく仕上げました、っていう。ちょっと優等生的な感じ。被災地を取材して描くよりもせっかくの二十歳前後の感性なんだからそこで感じた何かを見たかった。
私、去年の震災の瞬間、荒川チョモランマの観劇中だったんです。その瞬間に作品を上演していたっていう稀有な経験に対してどう向き合ったのか、とか、すごく気になっていました。今回はあえてそこから離れて作品を作ったようでしたが、他の人が経験し得ないその体験を作品作りに生かしてもよかったんじゃないかと思いました。
全体的に振り返って取材して、という形だったようなので、震災のあの時あの瞬間は、っていう作品が多かったように思います。一年経った今、この場での作品、というのをもっと観てみたかったとも思いました。
ただ、企画自体はおもしろいと思います。あるテーマや問題意識を持って複数の団体が作品を作る。それはまた観てみたいです。
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